ワークライフバランス、キャリアの再構築、新しい生活様式への適応……。多くの選択肢がある一方で、企業側の思惑や社会の同調圧力も存在します。
固定観念を捨て、自分にとって最適な働き方とは何か。
生物学者で早稲田大学名誉教授でもありフジテレビ系列の『ホンマでっか!?TV』のコメンテーターを務める池田清彦氏が、多様な働き方の本質に迫ります。

◆一律の規則をやめて多様性ある組織を実現した企業

その最先端を行っている代表的な会社の一つがソフトウェア開発を手がけるサイボウズ株式会社だ。
サイボウズは1997年に愛媛県松山市に設立されたが、創業メンバーの一人だった青野慶久が社長に就任したのは2005年である。
当時は離職率がとても高いことに悩まされ、M&Aで大きな損失を出したりもして、社長を辞めるかどうかの瀬戸際まで追い込まれたそうだが、メンバーの多様性を重んじる組織のあり方を徹底的に追求した結果、会社は大きく生まれ変わった。
サイボウズが多様性ある組織を実現させるためにやったことは、「一律的な規則で働かせるのをやめること」だ。
◆「100人いれば100通り」の人事制度が導く革新
「多様性が大事だ」という人に限って、それを意図的に作り出そうとするものだけど、そもそも人間が多様であるのは当たり前なのだ。阻むものがあるとすれば、それこそが「ルール」のような枠に人をはめ込もうとすることであり、それをやめるという青野の決断は至極真っ当だと思う。
そうして生まれたのがメディアでも話題になった「100人いれば100通りの人事制度」である。この人事制度のもとでは、週に3日だけ働くというスタイルも認められるし、副業も自由である。
こうした人事制度の面白さからレベルの高い学生が集まるようになり、中途採用にもユニークな人が集まるようになる。そしてそこから先は多様であるのが当たり前である会社になっていったのだという。
サイボウズの事業の主力をなすのはクラウド事業であるが、それを成功に導いたのは、個性豊かなサイボウズの中でもとりわけ「アウトサイダー」的な存在の人たちだった。
これこそがまさに「多様性のある組織の強さ」だといっていいだろう。

