2015年から2025年に育てた11種の植物
2015年 アガベ「白糸の滝」──15年目の奇跡

ついに咲いた、15年育てたアガベ「白糸の滝」。父の日に妻から贈られた小さな苗が、こんなにも大きく育ち、ついに開花した。

アガベは“命を懸けて咲く花”。リューゼツランの仲間は花後に枯れる。花弁だと思っていた黄色は、実は雄しべ。花を初めて見たときは、鳥肌が立つほど感動した。
アガベ(リュウゼツラン)奇跡の開花! ニュースでも話題になった貴重な2種の花を公開2016年 キンギアナム──20年育てた株の誇り

桜と同じ頃、満開を迎えるキンギアナム。20年以上育てて大株になり、毎年見事な花を見せてくれる。

2004年に訪れた西オーストラリアで野生蘭を見て以来、この花には特に思い入れがある。旅が、今の私の園芸を形づくっていることを実感した年だった。
【デンドロビウム・キンギアナム系】オーストラリア原産のラン 魅力と育て方2017年 ピメレア(Qualap Bell)──繊細さの極致

ピメレア・フィソデスの可憐さは、オージープランツの中でも群を抜く。
重なり合う苞が鐘のように見え、その色合いは複雑で奥深い。

育てるのは難しいが、咲いたときの喜びは格別だった。
人気上昇の兆し! 注目のオージープランツ「ピメレア/Pimelea」2018年 アガベ・ベネズエラ──命を懸けた開花

知人からいただき、10年育てた株が突然のつぼみ出現。百年に一度咲くと言われる、センチュリープランツ。

アガベは開花すると枯れる“命の花”。
家で観賞するだけではもったいないと、勤務先の植物園に展示したところ新聞にも紹介された。多くの人に見てもらえたことも嬉しかった。
アガベ(リュウゼツラン)奇跡の開花! ニュースでも話題になった貴重な2種の花を公開2019年 ブラック・キャット──ようやく咲いた黒い猫

地下に肥大した地下茎をつくるタロイモ科の多年草で、黒花が魅力のブラック・キャット(Tacca chantrieri)。

数年育てて、株分けで増えても、なかなか咲かず苦労したが、植物園の温室で越冬させたところ、ついに開花した。
この花は“温度がすべて”だと実感した年だった。
黒花はカッコいい! 令和の新しいスター花 ガーデニングにオススメの黒花12選2020年 プルメリア──娘の結婚式の思い出とともに

このプルメリアは、2009年に娘のハワイ挙式で買った挿し木用の枝が“原点”。それを子株にして育てて、5年目にようやく咲いた。

親株は枯れてしまったが、この花が咲くと、あの日の青空が蘇る。コロナ禍のステイホームの憂鬱を吹き飛ばしてくれた。
庭に咲いたプルメリアの香りで気分はハワイ2021年 ダーウィニア・タキシフォリア──静かな気品と情熱

この年もコロナ禍で、ガーデニングがちょっとしたブームだった。華やかさはないが、見るほど味わいが深まるダーウィニア。

細い葉と控えめな花が、オーストラリアの乾いた空気を思い出させる。“派手さよりも趣”。園芸観がまた一歩成熟した年だった。
赤く炎のように燃えるオージープランツ「ダーウィニア」【オージーガーデニングのすすめ】2022年 バンクシア・バースディキャンドル──刹那の憧れ

憧れ続けたバンクシア。基本的に、「ザ・ベスト・フラワー・オブ・ザ・イヤー」は、自分で育てて開花させた花から選ぶと決めていたが、この年だけは、開花株を“自分へのご褒美”として購入した。

しかし一年で枯れてしまった……。
刹那の輝きだったが、憧れは確かに手の中にあった。
2023年 黒法師──花の合間から顔を出す“新発見”

黒法師は長年、育てていたが、黒法師の花が初めて咲いた年。
驚いたのは、花後に花の間から小さな“赤ちゃん株”がいくつも顔を出していたこと。

長年園芸をしていても、まだまだ初めて見る現象がある。これこそが園芸の醍醐味だ。
多肉植物の黒法師(クロホウシ)がカッコいい季節到来!2024年 ハーデンベルギア──春を告げる古い友人

30年ともに歩んできたのが、つる植物のハーデンベルギア。我が家のAlex’s Garden の春は、アカシアと、この花が告げる。

小さな花が集まって生み出す鮮やかさは、毎年見ても飽きない。長年の間に、我が家の雨どいや、アーチに絡み、なかなかの貫禄。
「ハーデンベルギア」の魅力と育て方【オージーガーデニングのすすめ】2025年 ジャカランダ──4株目の執念が咲かせた青い花

25年以上ジャカランダを育てて、幾度も失敗。18年育てた大木が咲かずに枯れたこともある。

そしてこの4株目。接ぎ木苗を地植えし、寒冷紗で冬越しを工夫し、ようやく5年目に、見事に開花した。植物にも気持ちは通じる——そう思わせてくれた年だった。
美しき異国の花、ジャカランダの魅力とは人生の深みを教えてくれるガーデニング

振り返れば、ガーデニングを始めてからの30年余り、私はいつも「花とともに」生きてきたように思います。
四季の移ろい、咲いては散る花々の姿に、その年その時の自分の暮らしや感情が重なり、庭は私にとって人生そのものの写し絵のようです。メルボルンの道路脇で見たアガパンサス、乾いた大地に強く咲くワイルドフラワー、広い空の下で揺れるユーカリの銀葉──。
海外で出会った植物たちは、私のガーデニング観を大きく変え、人生の針路までもそっと押し出してくれました。 花は、育てる者の努力や知識だけでは咲いてくれません。「気まぐれ」と言ってしまえばそれまでですが、むしろ私は、花には“意思”のようなものがあると感じています。

その意思と向き合い、ときに失敗し、ときに長い年月をかけてようやく一輪が咲く──そんな体験の積み重ねこそが、園芸の醍醐味であり、人生の深みを教えてくれました。
この回想録に綴った花々は、どれも一つとして同じものはなく、咲いた背景や心に宿した記憶も異なります。けれど、いずれの花も私にとって「その年の自分の姿」を映し出す宝物でした。

これからも、未来をイメージして庭に種子をまき、水をやり、新しい花と出会い、新しい驚きと感動を受け取る日々が続いていくことでしょう。年齢を重ねるほどに、庭の時間はゆっくりと、しかし確かな喜びとして胸に刻まれていきます。
2026年、みなさんはどんな花を咲かせるでしょう。新年も楽しみですね。
長い文章にお付き合いくださった読者の皆さま、そして30年もの間、私を支えつづけてくれた数えきれない花たちに、心から感謝を込めて。
Credit 写真&文 / 遠藤 昭 - 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー -
えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
