いつまでも輝く女性に ranune
「死ぬまで働きます」50年ローンで都内に狭小住宅を買ったが…月収31万円・退職金見込み額ゼロ、30代夫婦が途方に暮れた〈65歳時点の残債額〉【FPの助言】

「死ぬまで働きます」50年ローンで都内に狭小住宅を買ったが…月収31万円・退職金見込み額ゼロ、30代夫婦が途方に暮れた〈65歳時点の残債額〉【FPの助言】

住宅ローンの選択肢として、返済期間を50年とする「超長期ローン」が注目を集めています。月々の返済額を、現在の家賃以下に抑えられるのが最大のメリットですが、その裏側には、総返済額の増加と、定年後にも続く大きな残債というリスクが潜んでいます。特に、退職金制度が期待できない若い世代にとって、このローンは本当に賢い選択なのでしょうか。本記事では、波多FP事務所の代表ファイナンシャルプランナー・波多勇気氏が、佐伯さん夫婦(仮名)の事例とともに、50年ローンのマイホーム購入計画を解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。

退職金がない若者が組む50年ローン

土曜の夜。小さなダイニングテーブルに、紙コップのコーヒーと住宅ローンの返済予定表が並びました。

「返済は月8万7,000円。50年ならいけると思ったんだ」

佐伯航さん(仮名/32歳)と妻の里奈さん(仮名/30歳)は、昨年、都内に新築の小さな戸建てを4,500万円で購入しました。

頭金はゼロ。借入は50年、変動金利0.6%相当でのスタートです。月々の返済は約8万7,000円に収まり、家賃より安い。――ここまでは順調にみえました。

ただ、航さんの会社は中小企業。就業規則の確認で「退職金制度なし」が判明しました。賞与は年1回・少額。月収は31万円前後、手取りはおよそ24万円。里奈さんは派遣社員です。共働きであっても、保育や将来の教育費、固定資産税、修繕積立、火災保険を加えると、家計は「ギリギリの均衡」。

「もし金利が上がったら?」里奈さんが小声で聞きます。

「変動だし、すぐには返済額が跳ねないって銀行の人も……」いいかけて、航さんは黙りました。資料の片隅に赤字でメモが残っています。

〈65歳時点の残債〉約1,680万円(金利0.6%がずっと続いた場合)

「え、定年のころに、まだこれだけ残るの?」

「繰上げ返済で減らすつもりだった。でも退職金がない。ボーナスも薄い。貯金を削ると生活が回らない。死ぬまで働くしかない……」

言葉が続きません。2人はしばらく、静かに予定表をみつめました。

50年ローン、返済期間中に金利が上がると

長期返済の魅力は、月々の返済額が下がることです。実際、50年の選択肢はネット銀行を中心に広がり、住信SBIネット銀行、PayPay銀行、auじぶん銀行などが取り扱いを公表しています。返済期間を延ばせば月の支出は抑えられますが、返済総額は増え、老後の手前まで残債が伸びやすくなります。

数式はシンプルです。元利均等で4,500万円を年0.6%・50年返済なら、月返済は約8万7,000円。ところが、同条件で65歳(借入33年経過)時点の残債は約1,680万円。金利が年2.0%で推移したと仮定すると、月返済は約11万9,000円、同時点の残債は約2,050万円。年3.0%なら、月約14万5,000円、残債は約2,310万円にまで膨らみます。月を軽くするほど、老後の前に「どっしりと残る」。これが超長期ローンの本質です。
 

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