設計替えと再挑戦
第一に、信用情報の整備です。新規申込は一旦止め、異動の保有状況と申込の記録を整理します。未使用のキャッシング枠やリボ設定は縮小または解除、不要なカードは計画的に解約します。奨学金と自動車の返済方式や残期間を見直し、繰上げ返済で月負担を圧縮できれば優先度は高いです。
第二に、借入総額と配分の見直しです。総借入を約1割落として9,700万円にすると、審査水準年4.0%・35年の世帯月返済は約42万9,491円まで下がります。配分も等分にこだわらず、夫5,700万円・妻4,000万円に組み替えると、月返済は夫約25万2,382円、妻約17万7,110円。他債務を加えた返済比率は、夫が約32%台、妻が約34%台まで下がり、一般的な基準に収まりやすくなります。固定支出が同水準でも、世帯の毎月総負担は約51万5,491円と、当初より約4万6,000円軽くなります。
第三に、申込戦略です。勤続1年の節目を待てるなら待ち、相性のいい金融機関を一行ずつ。当面は共益費の軽い板状の大規模や、中古の優良管理物件も比較に入れ、価格と固定費の両面で圧縮を図ります。団体信用の種類も見直し、上乗せが不要な範囲に収まるように健康告知と保障内容のバランスを取ります。
説明を終えると、葵さんがゆっくりとうなずきました。
「異動が残っているあいだは焦らない。まず家計を軽くして、私の枠を35%以内に戻す。できることがはっきりしました」
健太さんが笑顔で続けます。
「車の残債は繰上げの試算をして、僕側に少し多めに振る設計でいこう。次は一行ずつ丁寧に」
二人はダイニングテーブルにノートを開き、やることリストを書き出しました。
・キャッシング枠とリボ設定の整理
・奨学金と自動車の月返済を圧縮
・勤続1年のタイミングで申込再開
・共益費の軽い候補物件も同時検討
「半年後にもう一度、数字を揃えて面談しましょう。返済比率が線内に戻れば、東雲も現実的になります」筆者はそう締めくくりました。
その夜、二人は運河沿いを歩きながら、引っ越し後にやりたいことをもう一度語り合ったそうです。
朝のランニングコース、窓辺の観葉植物、週末の来客。否決の電話で止まった時計は、少しずつ動き出しました。数字が味方につけば、住まいの夢は遠のきません。次の申込は、通す準備を整えてから臨むと意気込んでいます。
波多 勇気
波多FP事務所
代表ファイナンシャルプランナー
