いつまでも輝く女性に ranune
寂しい、帰りたい…東北から上京、月額16万円・サ高住に入居の84歳母の孤独。息子のそばが“幸せ”とは限らない「呼び寄せ介護」の誤算

寂しい、帰りたい…東北から上京、月額16万円・サ高住に入居の84歳母の孤独。息子のそばが“幸せ”とは限らない「呼び寄せ介護」の誤算

高齢者の住まいとして存在感が増している「老人ホーム」。入居が決まったとき、多くの家族は安堵し、そこで「ゴール」したかのように錯覚します。しかし、老人ホームへの入居は、あくまで新しい生活のスタートに過ぎません。入居時には完璧に見えても、時間の経過とともに綻びが出ることもあります。一度は手に入れたはずの安住の地を去らなければならない、または自ら去る決断をすることも珍しくはありません。今回は、東北から上京し、老人ホームに入居したある女性のケースをみていきます。

「まさか母がこんな目に」ネットの情報を鵜呑みにした代償

「こんなことになるなら、もっと自分の目で確かめるべきでした。ネットの星の数や評判なんて、何の意味もなかったんです」

田中美咲さん(仮名・48歳)。彼女は半年前に78歳の実母・美子さん(仮名)を有料老人ホームに入居させましたが、わずか3ヵ月で退去を決断することになりました。

入居のきっかけは、昨今の老人ホーム事情について特集したテレビ番組を観たこと。そこで紹介されていた老人ホームは、美咲さんが思い描いていた施設とはまったく異なるものでした。

「子どものころに抱いたイメージから、老人ホームは薄暗く、陰気なものだと思っていました。ただテレビで観たホームは、まるでリゾートホテル。清潔で明るくて豪華で。イメージが180度変わりました」

ちょうどそのころ、1人暮らしをしていた美子さんが、築50年の自宅をどうするか悩んでいました。住み続けるなら、建て替えが必須。しかし、80歳手前での建て替えは現実的ではない――そこで急浮上したのが、イメージがガラリと変わった老人ホームだったわけです。

「母は当初、老人ホームへの入居には消極的でした。しかし、ネットで今どきのホームがどのようなものか見せると、『こんな素敵なところに入れるならいいわね』と言ってくれて。早速、ホーム探しが始まったんです」

まずスマートフォンで「地域名 老人ホーム 評判」と検索。検索結果の上位に出てきた介護施設は、レビューサイトでも「星4.8」と非常に高い評価を獲得していました。ホームは新しくオープンしたばかりで、建物は美しく、まるでホテルのようなロビーに笑顔のスタッフ――口コミをみていくと、「施設がとても綺麗」「スタッフが親切で安心」といった絶賛のコメントが並び、「ここなら間違いない」という確信に変わっていきます。月額費用は20万円。年金月14万円の母ですが、足りない分は貯金で補填することにすると、予算面でもバッチリでした。

すぐに資料請求すると、翌日には担当者から電話があり、見学に行くとトントン拍子で契約が進みました。担当の営業マンは本当に親切で、「お母様を全力でサポートします」と言ってくれたそうです。

しかし、その「高評価」の看板は、入居した翌日から色あせ始めます。

「面会に行くと、母の服が食べこぼしで汚れたままなんです。ナースコールを押しても、スタッフはなかなか来ない。やっと来ても『はいはい、どうしたんですか』と事務的に対応して、すぐにどこかに行ってしまう――そこでわかったのが、新規オープンのため経験あるスタッフは数える程度ということ。ほとんどが経験の浅いスタッフで、明らかにバタついているのです。サービスは行き届かず、とても『星4.8』の施設とは思えませんでした」

「高評価」=「良い施設」ではない?

株式会社LIFULL senior/LIFULL 介護『介護施設入居実態調査 2025』によると、老人ホームを探すときに利用した方法として、トップは「ケアマネージャーに相談した」が44.2%。「インターネットで調べた」が35.6%で続きます。あらゆることを決めるのに、ネットが欠かせない昨今。その流れは「老人ホーム選び」においても顕著になっています。

また老人ホームを探す際、金額や立地のほかに重視したものとしては、「スタッフの質・雰囲気」がトップで32.4%。見学に訪れた際のイメージが、入居の決め手になるということでしょうか。一方で、老人ホーム選びにおいて重要ポイントでありながら、ネット検索ではなかなか見えてこない部分であり、入居後のトラブルの原因となりやすい部分かもしれません。

同調査では、「入居前に想定していなかった点」を聞いていますが、その4位が「受けられると思ったサービスが受けられない」(14.7%)でした。田中さんのケースは、「新規オープン」が裏目に出てしまったもの。経験の浅いスタッフが多く、口コミ等で期待したサービスを受けられていないと感じたようです。

そもそもネットで多くみられる「高評価」には基準がさまざまです。田中さんが参考にした口コミは、実は「見学時の印象」や「建物の綺麗さ」に対するものがほとんどでした。新規オープンのため、まだ実際の介護サービスに対する評価は定まっておらず、宣伝活動や内覧会での「好印象」がそのまま星の数に反映されていたのです。当然、検索でも上位に来やすくなります。

しかし、「高評価」「星の数」という視覚的な情報だけで、田中さんは全面的に信頼してしまいました。ネット検索が当たり前になっている「老人ホーム選び」において、「一次情報」を自分で吟味することが大切。前述の調査でも、見学した施設数は平均「2.8ヵ所」でした。1ヵ所見学しただけで決めるのではなく複数を比較する。そして、見学の際は、案内してくれる相談員だけでなく、廊下ですれ違うスタッフの表情や、入居者への言葉遣いを観察する。しっかりと比較・検討することで、ネットの情報だけでは見えてこない、老人ホームの本当の姿が見えてくるかもしれません。

[参考資料]

株式会社LIFULL senior/LIFULL 介護『介護施設入居実態調査 2025』

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