
税務調査は、ある日突然やって来るものではない。調査対象の選定から始まり、事前通知、準備調査、そして臨場調査へと段階を踏んで進められる。そのなかで、近年とくに比重を増しているのが、実地調査に入る前段階で行われる「情報のふるい分け」だろう。この段階で、税務当局が重視する情報源の1つがSNSだ。調査対象がほぼ固まった直後、申告内容と生活実態にズレがないかを確認するため、投稿内容が細かくチェックされるケースが増えている。※本連載は、THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班が担当する。
調査は「机上」で8割決まる?
準備調査とは、限られた調査日数で最大の成果を上げるための下準備のことだ。過去の申告書、保有資産、取引先情報などを洗い出し、調査官は「どこを突けば矛盾が表面化するか」を想定する。いわば、調査の成否を左右する設計図づくりだ。
この過程でSNSは、帳簿だけでは見えない情報を補完する役割を果たすという。売上規模、客足、生活水準、交友関係――。こうした要素が投稿から浮かび上がることで、調査の優先順位が定まっていく。
①「行列必至」と話題の店舗、「申告なし」に違和感
SNSが調査のきっかけになった事例は珍しくない。口コミサイトや投稿で「連日満席」「行列必至」と話題になっていた店舗が、実は無申告だったケースもある。投稿を見た調査官が現地確認を行い、営業実態と申告内容の乖離が明らかになった。
税務署は万能ではない。しかし、多数の利用者が日々発信するSNSを俯瞰すれば、目立つ違和感は自然と浮かび上がる。国内ではLINE、YouTube、X(旧Twitter)などの利用者が数千万人規模に達しており、情報量という点では圧倒的である。
国税OB税理士は、次のように指摘する。
「いまは現地調査をしなくても、SNSを見ればおおよその規模感や生活水準が経験のある調査官ならわかります。調査官にとって、これほど効率的な材料はないでしょう」
