2023年6月、初のドキュメンタリー映画が公開された、ダウン症の書家・金澤翔子さん。共に歩んできた母・泰子さんは80歳を前に、翔子さんとの二人三脚の人生に一つの区切りを付けたと言います。
翔子37歳、母・泰子80歳
※この取材は2023年4月に行いました。年齢は取材当時のものです。
ダウン症の書家・金澤翔子さんは37歳。
天衣無縫で力強い書は「魂の書」とも呼ばれたくさんの人の心を動かしてきました。
そんな翔子さんの書の師匠でもある母・泰子さんは今年80歳。娘に障害があると知ったときからずっと「私が死んでもこの子は生きていけるのか」と考えてきましたが、昨年、一つの区切りをつけたと語ります。

かなざわ・やすこ
1943(昭和18)年千葉県生まれ。書家の柳田泰雲・泰山に師事。90年、東京都大田区に「久が原書道教室」を開設。『天使がこの世に降り立てば』他著書多数。
かなざわ・しょうこ
1985(昭和60)年東京都生まれ。5歳より母の指導で書を始め、20歳で初個展。東大寺などの神社仏閣で奉納揮毫(きごう)。森アーツセンターギャラリーなどで大規模展覧会を開催。
一人暮らし7年目、翔子は思った以上に暮らし上手でした
翔子さんが、初めて実家を出て一人暮らしを始めたのは30歳のときでした。泰子さんは、こう振り返ります。
「出産して50日目に翔子はダウン症で知的障害があると告知されて以来、『この子は一人でどれくらいやっていけるだろうか』『私が死んでも生きていけるだろうか』と考えてきました。
今思うと、人の気持ちに敏感な翔子は、そんな私の不安を感知していたのかもしれません。自分が一人で生きていくことで、母親が救われるとわかっていて、自分から料理や掃除を一生懸命覚えました。そして20歳になったとき、みんなの前で『30歳になったら一人暮らしをします』と宣言したのです」
しかし障害があることで部屋を貸してくれる人はなかなか見つからず、やっと借りられたのが地元の商店街にあるマンションでした。
「自ら飛び出していった翔子は、思っていたよりもずっと一人暮らしが上手でした。スーパーマーケットでは買い物せず、お米屋さん、和菓子屋さん、喫茶店と、商店街をひた走り、一人一人と顔見知りになって、みんなが翔子を待っていてくれるようになりました」

