翔子には、愛しかないんです
2023年6月、翔子さんと泰子さんのこれまでの歩み、そして翔子さんの書が「魂の書」といわれるゆえんを描いた映画「共に生きる 書家金澤翔子」が公開されました。
「一昨年、初めて個展に来られた宮澤監督が、翔子の書を見てびっくりされて、瞬く間に映画化が決まったんです」と泰子さん。翔子さんの書は、なぜ見る人の心を動かすのか――ずっと考えてきた泰子さんは一つの答えにたどり着いたそうです。
「翔子ってね、愛しかないの。お金持ちになりたいとか、えらくなりたいとか、そういう欲望が何もない心には、ただみんなに喜んでもらいたいという愛しかない。IQは低く、常識も社会性もないけれど、純粋な感性が育っていたのだと思います」
翔子さんはいつでも幸せなのだと言います。
「翔子が電話で『お祭りでお神輿(みこし)を担いだの。楽しかった。でも背が小さくて届かなかった』と言うんです。背が届かないのに何が楽しいのと思ってしまうけど、翔子はとても幸せそうで。
同じ現象の中に地獄を見る人と天国を見る人がいて、翔子は常に天国を見ているんです。思えば翔子の障害を知り、もう希望がない、生きていけないと苦しんだのは私だけで、翔子はいつでも幸せだった。人間は生きているだけで大成功なんだと、今思うんです」

映画「共に生きる 書家金澤翔子」
天賦の才を二人三脚で開花させた書家金澤翔子さんと母、泰子さん。数々の苦難を乗り越え育まれた母娘の絆を描くドキュメンタリー映画。
監督:宮澤正明 出演:金澤翔子、金澤泰子 プロデューサー・構成:鎌田雄介
公式サイト:https://shoko-movie.jp/
翔子さんの誕生から幼少時代までを振り返る「母・金澤泰子#1 ダウン症の書家・金澤翔子さん・泰子さん母娘の歩み」から、大人になっていく翔子さんと人生後半へ向かう泰子さんの思いを全5話でご紹介します。
取材・文=五十嵐香奈(編集部) 撮影=中西裕人
※この記事は「ハルメク」2023年6月号の内容を再編集しています。
書家・金澤翔子さん・泰子さん母娘インタビュー《シリーズ5回》
【第1回】ダウン症の書家・金澤翔子さん・泰子さん母娘の歩み
【第2回】母・泰子さん「自分が死んだら、娘は一人でどうなるか?」
【第3回】翔子さん30歳「ひとりでも、大丈夫」念願のひとり暮らし
【第4回】つらく苦しいことは、いつか翻るもの…泰子さんが語る親の使命
【第5回】娘・翔子と歩んでわかったこと「人間は生きているだけで大成功」

