「上手に年をとるのは大変なんだぞ」――亡き父の言葉の意味が、今ならわかる。そして先輩女性の言葉に背中を押された日。黒木瞳さんが60代の今、年齢を自然に受け入れながら生きていくヒントを綴ります。エッセイ集『甘くない話』より。
黒木瞳(くろき・ひとみ)さんのプロフィール

俳優。1981年に宝塚歌劇団に入団し、娘役トップスターとして活躍。退団後は、俳優として数多くのドラマや映画に出演、エッセイや詩集なども執筆している。エッセイ『母の言い訳』(集英社)では第23回日本文芸大賞エッセイ賞受賞。映画監督としても「十二単衣を着た悪魔」など4作品を世に送り出した。
2026年3月23日 (月)、・24日(火)、東京・コットンクラブで日本のタップダンス界を牽引する第一人者・玉野和紀、自由で繊細な表現力を誇るHideboHとタップダンスのステージ「TAP OF DREAMS +」を開催。
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今だからわかる、父の言葉
人は、年をとる。それは、すごいことなんだと亡き父が教えてくれた。
父がまだ生きている頃、久しぶりに帰郷した私は老いた父を見て、「お父さんも年とったね」と言った。すると父は、「上手に年をとるのは大変なんだぞ」と笑って答えた。
今なら分かる。 年をとるのは大変だ。しかも、上手に年をとるということには深い意味がある。
ただ起きて寝てを繰り返していても生きていることには変わりはない。でもその繰り返しの中に、喜びがあったり苦しみがあったりしながら一日一日の命を感謝して生きていくことこそ上手に年をとることなんだと思う。
生きている意味を問うような憂鬱があったり、残された時間を惜しむ気持ちがあったりする。だからこそ湧き出る慈愛や優しさや思いやりの気持ちが生まれる気がする。

