◆中国社会に根づく孝行思想と科挙
儒教における「孝行」という思想がいかに中国社会に影響を与えていたかといえば、なんと役人の採用時の基準に使用されていたほど。中国では長らく「科挙」という制度が採用されていたのは有名な話です。そして、この制度が本格的に浸透する前、後漢時代には孝行や廉直であることを基準に推挙する「孝廉」という制度がありました。
これはどういう制度か。まず、ある村に「あの子は親孝行だ」という評判が立つ青年がいたとします。その場合、その人物が村役人に取り立てられるには、孝行心があるかどうかが判断基準とされました。そこで実際に有能であれば、町役人、さらには地方官へと昇進していくという仕組みです。
では、どうしたら親孝行かどうかがわかるのかというと、儒教では「丁憂」、すなわち「丁寧に三年喪に服する」行為が大事だとされました。簡単に言えば、「親が亡くなったので、三年間家にこもって泣き続ける」ということ。それがなぜ優秀さにつながるのかはわかりませんが、親孝行であることが、役人登用の第一条件とされたのは間違いありません。
その後、西暦二〇〇年代、魏という国で「九品官人法」が定められ、役人登用の制度化が進みます。そしてさらに時代が下り、六世紀末から七世紀にかけての隋という国で科挙制度が導入され、試験による官僚の登用が本格化していったのです。

