“ラパンテール”や“デクララシオン”など数々の名香を生み出してきた「カルティエ」の調香師マチルド・ローラン。彼女は香水とジュエリーが驚くほど多くの共通点を持つと語る。
「カルティエに入社して最初に驚いたのは、ジュエラーが石の大きさや色、カット、カラット数を正確にリスト化する作業でした。香水も同じように香料の分子量やパーセンテージを細かく書き出すので、構築のプロセスがまったく同じだったのです! そしてどちらも手首や首元など、肌に触れる場所が似ていること。実際に身につけた瞬間、人と調和して初めて完成するという点でも共鳴しています」

彼女はまた、人のオーラと香りの関係にも独自の洞察を持つ。
「多くの人がオーラを“光”と考えますが、古い文献では“香り”とも記されています。絵画で聖人の周囲に描かれる金の輪は、金の光、あるいは金の香りとも言われているのです」
さらに、「ジュエリーは石の中に光を閉じ込め、永遠に躍る輝きを生み出します。調香師もまた香りという目に見えないものを形にし、一つのパリュールを完成させる。同じ創造の営みだと思うのです」と語る。

香水の創作は、彼女にとってまさに芸術そのものだ。
「フランス語の香水=parfumは、もともと“何かを焚(た)いて煙を通す”という意味に由来します。古代ではその煙を天へ捧げ、神と対話する神聖な儀式でした。神話の中で香水は“神の汗”とも呼ばれています。現代の香水、特に香水芸術の世界には、人の人生を美と精神の高みへと導く力が宿っているはずなのです」

ローランが手がけた香水“ラ パンテール”は、「カルティエ」の伝説的なクリエイティブ・ディレクター、ジャンヌ・トゥーサンへのオマージュだ。
「彼女の自由で独創的なものづくりに惹かれました。そして豹(ひょう)という存在自体にも魅力を感じたのです。豹は動物界の中で唯一、良い香りを放つ動物と言われています。その汗はまさに“神の汗”とも表現され、『カルティエ』が神聖な動物を象徴にしているという点も、私の想像力をさらに掻き立てました」

どの作品も常に白紙の状態から、未知の香料や素材を探し続けて生まれる。ローランは今日も香水芸術の世界で、時を超えて香る唯一無二の香水を求め、新たな創造の旅を続けている。
いずれもローランが手がけた香り。
メゾンを代表する“ラ パンテール”から2024年に登場した新たな香り。なめらかなジャスミンと野生的なムスクが響き合う。

“デクララシオン”は鮮烈なスパイスを利かせた、感覚を刺激するウッディノート。シダーの深みとアンバーノートの華やかさを、バニラの官能性と融合。

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