◆遠回りの末に見つけた恩返しの形
――交流会では、さまざまな人たちと出会うわけですよね。楊木田英輝:はい。ちょうどこの取材をしている前後に、交流会時代の仲間の訃報に触れました。まだ交流会を立ち上げる前、一緒に仮面浪人をしていた先輩なのですが、彼は大学5年生で国立大医学部に進学しました。私は麻雀が好きで、プロ雀士にもなるほど打ち込みましたが、その先輩とはよく麻雀をやる仲でした。
仮面浪人・再受験交流会に在籍していた医学部志望の学生を先輩に紹介して、実際に医学部合格を勝ち取ることもありました。私自身は祖父が望んだ医師にはなりませんでしたが、私が作った場所で、医師になる子たちが出てきたことは喜ばしいですね。
――楊木田さん自身は、今後の人生についてどのように考えていますか。特に、希少な楊木田姓に久しぶりに誕生した男性ということでの期待もあると思います。
楊木田英輝:私は早稲田大学を卒業後、教育にかかわる仕事を長く続けてきました。また、2025年末までは都庁職員として勤務するなど、念願だった公務員の仕事にも就けています。ただやはり体調が不安定で、経済的なことなどを考えると、結婚を強く希望しているのに実現できていません。幸い、きょうだいの下の代には男の子がいるので、家は存続していくと思うのですが、本家の長男として、結婚して子どもを残して姓を守っていくことが私の責任だと思います。責任を果たして、恩返しできたらいいなと思っています。
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一般に、学歴にこだわる人間は鼻につく。煙たがられる。だが利己ではなく、自分を大切にしてくれた誰かに報いるためのトロフィーのためならどうか。いい年齢をしたおじさんがコンプレックスをこじらせている――そんな嘲笑をする者たちの想像がはるか及ばないところで、しのぎを削る人がいた。
<取材・文/黒島暁生>
【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

