◆時速60キロを厳守、それでも迫ってきた車
高田健一さん(仮名・50代)は、業界歴10年の中型トラックドライバーだ。夏のある日、山形県内の国道を走っていた。
「うちは会社が速度に対して本当に厳しいんです。デジタコ(事業用車両に搭載され、速度・走行時間・走行距離などの運行データをデジタル形式で自動記録する装置)で全部記録されているので、一般道では60キロ厳守です」
荷物を積んで走行していると、後方に1台の乗用車が張りついてきた。ミラー越しに見える運転手は、明らかに苛立っている様子だったという。
「蛇行しながら、車間は数メートル。正直、怖かったですね」
追い越し禁止の黄色いラインが続く区間だったが、見通しが開けた瞬間、乗用車はエンジンを唸らせて右側へ飛び出した。
「横を通るとき、睨まれました。『遅えんだよ』って顔でしたね」
◆強引な追い越しが招いた代償
国道沿いの“チェーン着脱所付近”に差し掛かった。夏場は“ただの空き地”だが、地元では警察が張り込むことで知られている場所のようだ。
「案の定、死角にパトカーがいました」
サイレンが鳴り、パトカーが本線へ。停止命令を受けた乗用車は、路肩へ誘導されていったという。
「その横を通ったとき、運転手がハンドルに突っ伏していました」
追い越し禁止違反、速度超過、そして“あおり運転”。高橋さんは赤色灯を確認しながら、「あの人、終わったな」と思い、その場を走り去った。
<取材・文/chimi86>
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。

