◆■調査官が持つ強力な「質問検査権」

財政と治安は国の根幹であり、税収は財政にとって非常に重要なものである。調査を受けずにのらりくらりといなされては困るので、調査官が持つ質問検査権はかなり強力になっている。
拒否したり虚偽の回答をした場合には、拘禁1年以下などの罰則規定も定められている。つまり、間接的に強制しているので、「間接強制調査」といわれる場合もある。任意という言葉尻をとらえて軽く考えている人もいるが、その点は気をつけておくべきだ。
質問検査証には、権利が及ぶ範囲が明記されている。たとえば京橋税務署と明記されていれば、京橋税務署の管轄しか調査はできない。
しかしコメは、東京国税局長が質問検査証を発行するので、すべての税務署の管轄エリアを調査できる権限を持っている。
税目についても同じだ。たとえば税務署の個人課税部門の場合、所得税調査が業務となるので、質問検査権は所得税法に関する調査に限定される。
◆■査察部と課税部の関係性
つまり、法人を直接調査することはできない。取引相手を調査する反面調査はできるが、その法人自体を調査対象にすることはできない。ところがコメの場合は、全税目において調査できる権限を与えられているのだ。強力な権限を持っているからと、過去にはデキの悪い実査官の横暴な調査のせいで、事件になったケースがある。国民から負託された質問検査権の使い方には、十分気をつけてもらいたいものだ。
意外と思われるかもしれないが、税務職員は質問検査権の教育をきちんと受けていない。せいぜい研修資料が配布されたりする程度である。
私が以前にペアを組んだ若い事務官(財務事務官、国税調査官昇任前の若手職員)は、調査中、なんと社長の奥さんの財布を勝手に覗き込んでいた。
その場で平謝りして事なきを得たが、あってはならないことである。ゆとり教育の弊害なのか、最近の若者には平気でこうした常識外れの行為をする者が少なくない。
話を戻すと、調査の性質に違いはあるものの、コメとマルサは不正をただす部署として目指す方向は一緒であり、蜜月の仲でもある。互いのノウハウを浸透させるべく、人事交流も行われている。査察部と課税部は、ギブ・アンド・テイクのような関係になっている。
<文/佐藤弘幸>
【佐藤弘幸】
元東京国税局・税理士。1967年生まれ。東京国税局課税第一部課税総括課、資料調査課などに勤務。主として大口、悪質、困難、海外、宗教、電子商取引事案の企画・立案及び税務調査を担当。2011年、東京国税局主査で退官。現在、税理士。著書に『仮想通貨脱税』(扶桑社)、『税金亡命』(ダイヤモンド社)、『富裕層のバレない脱税』(NHK出版)などがある。テレビ・雑誌のコメンテーター、テレビドラマの監修などでも活躍している。

