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中途採用者は入れない独特の空気感…欧州のビジネスパーソンが首をかしげる、日本企業の盤石な「新卒・同期のよしみ」文化

中途採用者は入れない独特の空気感…欧州のビジネスパーソンが首をかしげる、日本企業の盤石な「新卒・同期のよしみ」文化

同僚との立ち話や、メールのCCに入れる宛先の範囲……。私たちが日常的に職場で交わしているなにげないコミュニケーションのなかにも、“日本的な社内政治”が色濃く表れている可能性があります。組織行動論と組織アナリティクスを専門に研究する木村琢磨氏が、著書『社内政治の科学』(日経BP)より、複数の研究結果をもとに日本企業に見られる社内政治の特徴をみていきましょう。

あなたの上司もやっている?…「日本企業」の社内政治パターン

まず、日本企業の社内政治に関する研究を紹介します。日本企業の社内政治行動に関する興味深い研究として、1997年に発表されたアシャ・ラオらの調査があります(Rao et al., 1997)。この研究は社内政治より広い概念である影響行動を研究したものですが、日本の社内政治の特徴を考えるための示唆を与えてくれます。

彼らは、日本の大手商社のマネジャー層に対して、自分が頻繁に用いている影響行動を答えるアンケート調査を行いました。

この調査が調べたのは「マネジャーが部下に対して用いる影響行動」であり、必ずしも社内政治のような正式なルートを外れた行動だけではありません。しかし、回答者から挙げられた影響行動の一部は非公式に行われるもの、すなわち部下に対する社内政治行動といえるものを含んでいました。

彼らの調査結果から、日本企業らしい特徴を持つ影響行動をいくつか取り上げると、次のようなものがあります。

間接的な説明あえて曖昧な言い方をし、表面上は命令を出していないように見せながら指示を出す行動です。責任回避と影響力の行使を両立させる、日本企業に特徴的なやり方といえます。

見返りを求める:部下の面倒を見ることによって、その部下に「気にかけてくれる上司には応えたい」という恩返しの気持ちを起こさせ、自分の意図通りに動いてもらおうとすることです。

上位権限の利用:本当は会社の意向ではなくても「会社の方針だから仕方ないんだ」という説明をして部下を従わせることです。自分が命令を出すことによる責任を回避しつつ部下を動かすために「都合よく会社を使う」手法です。

社交:いわゆる「飲みニケーション」と呼ばれるものです。これは、業務時間外の飲み会や会食を通じて関係性を深め、影響を与える手法です。このような場では、職場では言いにくい本音やお願い事が、リラックスした雰囲気やお酒の勢いを借りて伝えられます。

オープンなコミュニケーション:これは、特定の依頼や命令の場面に限らず、日ごろの何気ないやりとりの中で情報や方針を部下に伝えていくことです。これによって、自然と部下の理解や納得を得ることを目的としています。

マネジャーは部下に対して命令するのではなく、状況をこまめに共有し、部下自身が「察する」ことを促し「同調するように仕向ける」(いわゆる同調圧力)のです。

ラオらの研究は、日本企業らしい、モノをはっきり言わずに曖昧な言葉や無言の圧力を通じて組織を動かそうとする、間接的・婉曲的なマネジメントスタイルを明らかにしています。

30年近く前の研究ですが、このような間接的・婉曲的な政治行動は、皆さんの職場でも見られるのではないでしょうか?

「社内政治」がイノベーションを推進している側面も

日本企業における社内政治を調査した最近の研究成果として、神戸大学の宮尾学教授らの論文が挙げられます(Miyao et al.,2024)。

この研究では、日本企業で働くプロジェクト責任者がイノベーションの推進において行っている政治行動を明らかにしています。彼らは調査結果に基づき、政治行動を大きく分けて以下の3種類に整理しました。

1.プロジェクトの位置づけ

プロジェクトの戦略的な意義を強調して社内の支持を得る。

【例】

・プロジェクトを会社の戦略と結びつけて意味づける。そのうえで、その意義を関係者に訴える。

・相手の立場に応じて自分の主張を調整して落としどころを見出す。

・プロジェクトの重要性が社内に理解されるよう、伝えるための言葉を作り込む。

2.エビデンスの構築

既存の証拠や新しい情報を組み合わせて、プロジェクトの妥当性や将来性を裏づける。

【例】

・過去の事例をもとに成功のためのステップをストーリー仕立てで示す。

・新製品の試食のように、社内の人が体感できる形で新しい技術や取り組みが優れていることを示す。

・社外の専門家やその道の権威に、自分たちの技術やアイデアを推薦してもらう。 

3.関心の維持

プロジェクトへの注目を絶やさず、社内での支持を増やしていくための継続的な行動です。

【例】

・検討事項から外されないようにプロジェクトを繰り返し売り込む。

・耳を傾けてくれる人に「草の根的に」アイデアを売り込む。

・プロジェクトを支援してくれる人を見つけて巻き込む。

といった行動が含まれます。これらは、正式な権限や支援がない場合でも、影響力のある人物に事前に「根回し」をしたり、草の根的に周囲を巻き込んだりして合意形成を進めていく行動です。

このような社内政治は、会社に必要だと思われるプロジェクトへの支持・支援を獲得するためのものといえます。利己的な側面もなくはありませんが、社内政治が自己利益だけのものではないことがわかります。

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