「苦労の塊」はまず仕分けることが大切

この仕事を続けて40年、どうすれば個人の苦労をみんなの苦労にできるのか、それにこだわってきました。私たちのところに病気の相談に来るのは、眠れないとか、変なものが見えたり聞こえたりするとか、混乱状態を抱えている人たちです。小さな困り事が蓄積に蓄積を重ねて、苦労の塊になってしまっているのです。
「苦労は、苦労を抱えている人の問題だから、その人自身で解決すべきこと」と思っている人は多いですが、実際はそうではないこともあります。それは、苦労には、本人の内側にある苦労と、本人の外側にある苦労があるからです。
外側にある苦労の出どころは、周囲の人が抱えている問題や、社会の環境や仕組みなどです。その苦労から解き放たれるためには、みんなで一緒に苦労の分別と仕分けをするのが大切なのです。これは自分の苦労、これは家族の、これは社会の……などと。
個人の苦労をみんなの苦労に…他人の苦労は返却する

他人の苦労はそれぞれに返却します。他人の苦労に端を発している「自分の苦労」は、いち早く「みんなの苦労」にしなければいけません。でも、自分が持っておくべき苦労もあるので、それは手放さないようにします。
冒頭のフランクルの言葉をもう一度借りると「苦悩から逃げずに前向きに苦悩することが最も人間らしい。そこに希望がある」からです。私たちは、自分の苦労とどう付き合っていくのかを考えていかなければいけません。
べてるの当事者たちは、統合失調症などを持つ人たちが多いですが、そうでない人でも、誰もが悩みや不安、生きづらさを抱えて生きています。それはどんなに家族と仲良く暮らしている人でもです。
「なんでも話せる家族」のはずなのに、どうしても夫の実家の話題は話しづらいとか、子ども家族のお金のことにはもやもやとしたものを抱えているとか……ありますよね? こういった悩みは表に出すことが大切なのです。
みなさんは、うまくいったこともいかなかったことも含めて経験を蓄積している世代です。その経験を発信していったらいいと思います。ハルメクの読者のみなさんで、弱さの情報公開ができるような場を持てるといいかもしれません。
「閉じた苦労」を「開かれた苦労」にしていきましょう。苦労を開く習慣をつくることで、自分が救われるし、他人も救うことができるのです。これは、「生きやすさ」をシェアする場です。人生100年時代。これからの時間がたくさんある中で、どう生きるのかは重要な課題です。
次回は、どうやって弱さの情報公開を行うのか、その方法を紹介します。

