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2026年の採用市場はどこへ向かう?―エグゼクティブでも若手でもない「課長級=ミドル層」争奪の兆候【キャリアのプロが解説】

2026年の採用市場はどこへ向かう?―エグゼクティブでも若手でもない「課長級=ミドル層」争奪の兆候【キャリアのプロが解説】

「2026年はミドル層の採用市場が過熱してくる」。そう語るのは、サーチ・ビジネス(ヘッドハンティング)の先駆者である東京エグゼクティブ・サーチ(TESCO)代表取締役社長・福留拓人氏です。企業の採用に掛ける費用も有限のなか、なぜ多くの企業がミドル層の採用に熱を入れ始めているのか――見ていきましょう。

エグゼクティブ、若手人材…採用トレンドを振り返る

採用のトレンドには、大きく分けて二つの視点があります。


ひとつは10年、20年という長いスパンで見た構造的な変化。もうひとつは、1年から2年程度の短期的な動きです。興味深いのは、この二つが必ずしも同じ方向を向くとは限らず、ときに反比例するように見える点です。これも採用市場の特徴だと言えるでしょう。

過去20年ほどの採用動向を振り返ると、やはり大きな転換点はリーマン・ショックでした。「100年に一度」と言われる未曽有の不況を経験し、企業の在り方や経営に求められる価値観は大きく変わりました。それまでの秩序が崩壊し、新しい概念やリーダーシップが求められるようになったのです。

その流れの中で注目を集めたのが、いわゆるエグゼクティブ採用(CxOクラス以上)を中心とした経営層の採用でした。2000年代初頭には、この領域の重要性と難易度の高さが広く認識され、多くの企業がここに注力しました。実際、当時はこの層の採用が市場の「ホットゾーン」だったと言えるでしょう。

やがてその動きが一巡すると、注目されたのが先進国共通の課題である少子高齢化です。とりわけ日本は、その影響が最も顕著な国のひとつです。これは政治や経済の議論にとどまらず、社会全体の空気感としても明確になってきました。

少子高齢化の原因についてはさまざまな見方があります。ある社会学者は「国民が貧しくなり、子どもを育てられなくなった」と指摘しました。一方で、成熟した社会ほど娯楽が増え、「結婚しなくても楽しいことがあふれている社会は、必然的に少子化を招く」と語る経済人もいます。

いずれにせよ、人々の間には「若い世代はこれから増えない」「移民政策も不透明だ」という閉塞感が広がっています。日本では特に移民受け入れへの慎重論が根強く、完全なグローバル化にはブレーキがかかっています。

その結果、限られた若手人材を奪い合う構図が生まれ、ジュニア層や第二新卒の争奪戦が激化しました。この状況は、構造的な問題として長く続く課題になるでしょう。

2026年は「ミドル層」の採用が注目される

そうした流れの中で、ここにきて存在感を増しているのがミドル層の採用です。ミドルの定義は曖昧であり、業種にもよりますが、あえて言えば課長級前後、年収ベースでおおよそ650万円から900万円程度のゾーンを指すと考えてよいでしょう。この層も、今後一気に過熱する可能性があります。

理由は明確です。企業の競争力の源泉は、現場を束ねる部長級、事業部長クラスの厚みにあります。現場を率いるこの層が強い企業は、組織全体としても強い。車に例えれば、役員が足回りであり、そこが最も重要だという議論は、40年ほど前から繰り返し語られてきました。そのため、この層の採用が完全に途切れることはありませんでした。

それでも私が「これから過熱する」と見ているのは、このミドル層に対する採用単価、つまり企業の投資が一気に過熱し始めているからです。CxOクラスの採用は、極端に言えば「一度成功すれば、しばらく動かない」領域です。着任した人材が活躍すれば、そのポストは長期間埋まりますし、後進育成も期待されます。採用単価も高く、多くの企業は、毎年のようにCxOを採ることは考えていません。

一方で、ジュニア層は流動性が高く、一定の離職は避けられません。将棋の駒に例えるなら「歩」です。前線に出て討ち死にすることもあれば、敵陣で「成り金」になって戻らないこともある。新しい駒を入れ続けないと枯渇してしまうからこそ、企業は採用を止めるわけにはいかないのです。

定期採用で10人採っても、実質的に残るのは3人程度というのが現実でしょう。しかし、その3人の中に将来のCxO候補が含まれている可能性がある。だからこそ企業は「わかっちゃいるけどやめられない」採用を続けます。先ほどの将棋の例えにすれば、「歩」から「成金」になった駒が、かけがえのない活躍をするということがあるからです。

では、具体的にミドル層の採用はどうなっていくのでしょうか。

ミドル層に関しては、これまでどの企業でもある程度の採用はありました。2026年も、募集人員の数、重要性の背景などに、おそらく大きな変化はないでしょう。では何が変わったかというと、企業側の心理面です。ミドル層に対する採用単価を上げ、他の企業との争奪戦を勝ち抜いて採用まで至らなければなりません。

年収800万円クラスの人材をエージェント経由で採用すれば、これまでは300万〜400万円程度の採用単価が一般的でした。ところが最近では、「600万〜800万円を出す覚悟がある」という企業が増えています。年収の100%に近いコストをかけてでも、優秀な人材を確保したいという意思表示です。さらに、サインアップボーナスとして200万〜300万円を一時金で支払うケースも珍しくなくなってきました。採用単価、初年度処遇を含めた総コストを考えれば、企業は相当な投資をしていることになります。

そういうコストを支払っても採用せざるを得ないし、採用するには代償を払わねばならないわけです。こうした動きが、いよいよミドル層に波及し始めています。2026年前半には、この仮説がより明確な形で表れてくる可能性が高いでしょう。

もっとも、企業の採用予算は無限ではありません。限られた資源をどこに集中投下するのか。何を残し、何を切るのか。2026年は、採用においても一層厳しい選択が迫られる年になるはずです。その中で、ミドル層の採用市場は、これまで以上に注視すべきテーマになると考えています。

福留 拓人
東京エグゼクティブ・サーチ株式会社
代表取締役社長

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