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アボカド高騰の陰に、知られざる“血と暴力”が存在していた…農家を脅かすメキシコ「カルテル」の恐怖支配

アボカド高騰の陰に、知られざる“血と暴力”が存在していた…農家を脅かすメキシコ「カルテル」の恐怖支配

◆アボガド価格に含まれる、「カルテル」へのみかじめ料

 このアボカドをメキシコの犯罪組織が見逃すはずはなかった。メキシコには「カルテル」と呼ばれる大小多数の犯罪組織が各地に存在する。誘拐や婦女暴行でアボカド農家を脅し、みかじめ料を吸い上げる。逆らった農民とその家族は殺害され、見せしめとしてさらされる。「カルテル」は力を誇示して農民らの暮らしを恐怖で支配するようになった。現在のアボカドの価格には、「カルテル」に払われたみかじめ料が経費として上乗せされているという訳だ。

 地元ジャーナリストの分析では「カルテル」の構成員は約17万5000人。メキシコでは国内5番目の「雇用主」だという。ここまでの勢力となると、取り締まるはずの警察や軍には期待できない。汚職が蔓延し、情報は「カルテル」に筒抜けだからだ。「カルテル」と裏でつながる政治家もいるとされ、メキシコ社会から「カルテル」を締め出すことはできない。

 アボカド農家の中には、武器を手に立ち上がる人々もいるが、とても対抗できるものではない。「カルテル」はこうした自警団にも入り込んで農民を懐柔する。自警団が新しい「カルテル」になってしまうことさえある。

「カルテル」の脅しに耐えきれず、恵まれたアボカド農園の経営をあきらめ難民としてアメリカに向かった人もいた。アボカド栽培が盛んなミチョアカン州でアボカド農園を営んでいたという男性は家族と従業員を守るために、1カ月2500ドル(約39万円)のみかじめ料を「カルテル」に払っていた。前年に弟が誘拐され、身代金を払ったものの、弟が戻ることはなかった。絶望の末に農地を捨てた。

◆健康果実の裏で続く暴力と沈黙

 移民問題のニュースサイトが男性について報じると、ニューヨークのラテン系移民社会でも話題になった。男性とその家族は亡命希望者としてアメリカに入国できたと聞き、接触を試みたが、「カルテルが怖い」との理由で、取材はできていない。アメリカに逃れても、なお「カルテル」の影におびえている。

「世界のアボカドの首都」といわれるミチョアカン州ウルアパン市では、11月1日にカルロス・マンソ市長が、地元の祭りに参加中に7発の銃弾を浴びて暗殺された。市長はアボカド産業への「カルテル」の関与を強く非難し、政府や警察に取り締まりを強化するよう訴えていた。逮捕者の中には7人の市長のボディーガードも含まれている。

 アボカドを丸ごと食べることを教えてくれたタクシードライバーの仲間も、メキシコ出身だった。「アボカドに罪はないが、事情を知りながら、ただただアボカドを食べている自分もどうかと思う」と自嘲気味に話していた。

 アメリカ農務省の査察官がメキシコ国内で「カルテル」に銃を突きつけられたためにアボカドの輸入が一時停止されたことがあったものの、アメリカ国内も世界の各地でも、メキシコでのアボカドを取り巻く現状はほとんど知られていないし、意識もされていない。

 信じられないほど多くの血が流れているのに、世界では何事もなかったかのように健康果実としてアボカドが消費されている。無知や無関心が暴力や不条理の最大の温床であることがよくわかる。

【谷中太郎】
ニューヨークを拠点に活動するフリージャーナリスト。業界紙、地方紙、全国紙、テレビ、雑誌を渡り歩いたたたき上げ。専門は経済だが、事件・事故、政治、行政、スポーツ、文化芸能など守備範囲は幅広い。
配信元: 日刊SPA!

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