◆ハザードで“謝罪の意思”を示したが…
会社の会合が終わり、山本悟さん(仮名・40代)は社長を自宅まで車で送ることになった。信号で止まり、青に変わったのだが、山本さんはよそ見をしていたため、スタートが遅れてしまったという。「後ろに止まっていた車から何度もクラクションを鳴らされました。ハザードをたき、“謝罪の意思”を示したんですが、運転手の怒りは収まらないようでした」
運転手は車間距離を詰め、後ろからパッシングするなど、挑発してきた。
「私は危険を感じて、社長と話して近くのコンビニの駐車場に逃げ込むことにしたんです。これで、あおり運転も終わるだろうと考えたのですが……甘かったですね」
相手の運転手も山本さんの車にぴったりとついてきており、そのまま駐車場に入ってきたそうだ。「面倒なことになりそう」と思いつつも車の中で待機していると、相手の車のドアが開いた。
◆社長の予想外の呟きに青ざめる運転手

「これはまずい……」と山本さんが困惑していると、隣に座っていた社長が呟いた。
「Aくん?」
その言葉を聞いた山本さんは思わず社長を見た。社長は怪訝そうな表情で、男性をジッと見つめていたという。そして……。
「窓を開けて、『君、Aくんだよね?』と声をかけました。すると、男性の表情は一変。顔が一気に青ざめて、口をパクパクさせて言葉を失っていましたね」
「O社長! す、すみません。本当に申し訳ありません」
男性は突然、何度も頭を下げはじめたのだとか。
「何が起きているのか理解できませんでしたが、男性はどうやら“社長が商談の場で何度も顔をあわせている営業マン”だったんです。社長は、男性のことを覚えていたようでした」
「決して悪気があったわけではない」と言われたが…
「Aくん、これはダメだよ」
平謝りする男性に、社長は軽くため息をついた。すると男性は、
「いえ、その……誤解です。決して悪気があったわけではなくて」
とよく分からない理由を並べて、必死に弁解をしようとしたという。社長はそれ以上何も言わず、山本さんに「行こうか」と促した。
後日、社長に“商談はどうなったのか”を聞くと、「もちろんなくなったよ(笑)」とのこと。
「当然の結果ですよね。あおり運転をするような人物が信用を失うのは当然です。その後、男性がどうなったのかは知りません。少なくとも、男性の会社との関係は完全に断たれました」
普段の行動が思わぬところで自分に跳ね返ってくる。そんな状況を目の当たりにした出来事だったとか。
<取材・文/chimi86>
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。

