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“二十歳”を迎える若者が生まれた「2006年」何があった? エレベーター事故、プール事故…法制度改革の“転機”となった重大事件が相次ぐ【成人の日】

“二十歳”を迎える若者が生まれた「2006年」何があった? エレベーター事故、プール事故…法制度改革の“転機”となった重大事件が相次ぐ【成人の日】

今日は「成人の日」であり、日本各地の自治体で、2025年度(2025年4月2日~2026年4月1日)に二十歳を迎える若者らを祝う「成人式(二十歳のつどい)」が開催される。

彼らの多くが生まれた2006年は、後に法制度の改定のきっかけとなった重大事件が相次いで起きた年でもある。本記事では、それらの事件の概要と、事件を契機として実現した法制度の改正の内容についてまとめる。

シンドラーエレベーター事故

2006年6月、東京都港区の公共住宅でシンドラー社製エレベーターが突然上昇し、当時高校2年生だった男子生徒(16歳)がエレベーターのカゴの床部分と建物の天井に挟まれて死亡。原因として保守管理の不備やブレーキ・制御系の不具合が考えられ、海外製品の安全基準が問題視された。

この事故を受け2009年に建築基準法施行令が改正され、戸開走行保護装置の設置義務化、定期検査制度の厳格化が実施。現在のエレベーター安全基準の根幹をなし、全国で安全装置設置が進んだ。

埼玉ふじみ野市プール死亡事故

埼玉県ふじみ野市の市営プールで2006年7月、小学2年生の女児が排水口に吸い込まれ死亡した。市から管理業務の委託を受けていた民間業者が下請け会社に業務を丸投げし、研修や指導等を受けていない監視員が多数いた、係員が排水口の蓋(ふた)が外れていることを把握していながら客をプールから出さなかったなど、ずさんな管理状況が原因であったことが発覚した。

その後、文部科学省が学校プール安全管理指針を策定。民間委託における行政の監督責任が確立された。

いじめ自殺の多発

2005年から2006年にかけて北海道滝川市、福岡県筑前町で児童生徒のいじめ自殺が相次ぎ、学校や教育委員会の対応の遅れや隠蔽(いんぺい)体質が批判され、いじめ問題が最重要課題となった。

文部科学省は2006年、いじめの定義を見直し、被害児童生徒の主観を重視する方針に変更。

すなわち、従前の「一方的に」「継続的に」「深刻な」といった文言が削除され、学校の内外を問わず、「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの」と定義された。そして、その判断は表面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うものとされた。

その後、2013年に「いじめ防止対策推進法」が制定され、さらなる実質化が行われている。

福島県立大野病院事件で医師が逮捕

2004年12月に発生した帝王切開手術中の妊婦死亡事例で、2006年2月に執刀医が業務上過失致死罪で逮捕、起訴された。産科医療で起こりうる合併症への対応について刑事責任を問うことの是非が問題となった(のち地裁で無罪判決確定)。

全国で産科医の退職や分娩(ぶんべん)取り扱い中止が相次ぎ「医療崩壊」が社会問題化する中、2009年に産科医療補償制度が導入され、2014年には医療事故調査制度が創設された(2015年10月施行)。刑事事件化前に第三者機関による原因究明を優先する仕組みの整備により、「隠す文化」から「学ぶ文化」への転換が進んでいる。

医療の不確実性を前提とした制度設計という新たなパラダイムを示した事件として、現在も医療安全教育で重要な位置を占める。

多重債務問題の深刻化

いわゆるグレーゾーン金利(※)での貸付が横行し、過剰融資による生活困窮と過酷な取り立てが社会問題化する中、2005年の統計で5件以上の借入れをしている多重債務者が約230万人、自己破産者が約18万4000人、経済生活苦による自殺者約7800人という深刻な状況が継続していた。

※利息制限法の上限金利を超えるが、処罰対象となる出資法の上限金利に至らない金利

これを受け、2006年12月に貸金業法が改正され(2010年完全施行)、グレーゾーン金利撤廃で上限金利20%に統一、年収の3分の1を超える貸付を禁止する総量規制が導入された。

多重債務者向け相談窓口も全国で整備されている。多重債務者数の大幅減少と貸金業界の健全化が進み、消費者保護の視点が金融政策に定着し、経済的弱者保護における法の役割を明確に示す転換点となった。

障害者自立支援法施行への反発

2006年4月施行の障害者自立支援法で、障害福祉サービスに原則1割の応益負担が導入され、障害者の経済的負担が急増。「障害が重いほど負担が重い」という矛盾が生じ、全国で抗議運動と違憲訴訟が展開される事態となった。

2010年に国が訴訟で和解し応益負担導入を謝罪、2013年には障害者自立支援法が廃止され、障害者総合支援法へと移行し、応能負担に実質転換している。

負担上限額の大幅引き下げと障害者権利条約批准(2014年)に向けた法整備が進み、現在は低所得世帯の負担がほぼゼロとなり、障害者の地域生活が実質的に保障されている。当事者参画の重要性を示す歴史的教訓として、福祉教育で必ず取り上げられる事例である。

二十歳の節目に振り返る、社会の変化とこれから

20年前に起きたこれらの出来事は、社会の安全管理や権利保障のあり方を改めて問い直す転換点となった。今年、二十歳の節目を迎える若者たちが歩んできた20年間は、個別の事案から得られた教訓が法制度へと反映され、社会の仕組みが再構築されてきた過程でもある。

過去の事例を風化させることなく、その経緯と現在の制度の意義を客観的に理解すること。それが、これからの時代を担う若者たちとともに、より良い社会を維持し発展させていくための礎となるだろう。

配信元: 弁護士JP

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