コーヒーチェーン「猿田彦珈琲」が店頭に設置している垂れ幕が、2025年12月下旬ごろからSNS上で波紋を広げた。これは、25年に開催されたコーヒーの世界大会で、同店の従業員が世界2位と5位という成績を収めたことを伝えるもので、大きな字で「惜」と書かれていた。

SNSでは、「祝」と書いてもいいのではないか、などと指摘する声が上がった。運営会社の広報担当はJ-CASTニュースの取材に対し、「祝」ではなく「惜」という表現を選んだ理由を説明した。
「ネガティブな感情は一切ありません」
この垂れ幕がSNSで注目を集めたのは、25年12月18日ごろだ。猿田彦珈琲の従業員である野澤隆成バリスタが国際的なラテアート競技会で世界2位を、伊藤大貴バリスタも国際的なバリスタ競技会で世界5位を獲得したことを報告する内容だった。
この成績を伝える垂れ幕の「惜」という表現がSNS上で話題となり、「祝」と書かないことへの批判や疑問が相次いだ。
J-CASTニュース記者も同月19日、東京都千代田区内の猿田彦珈琲を訪問した。店舗の出入り口付近には、先述した「惜」の垂れ幕が掲げられていたのだが、店内の注文カウンター付近には、同様の成績を伝えるポスターがあり、こちらには「祝」と表記されていた。
その後26年1月8日に再び訪問すると、「惜」の垂れ幕は掲げられたままだった。だが、「祝」と表記されたポスターは撤去されていた。
コーヒー世界大会での今回の成績について、運営会社の広報担当は12月23日、「率直に申し上げて、世界の舞台で活躍した2人のバリスタを心から誇りに思っています。ネガティブな感情は一切ありません」と取材に明かす。
だが「惜」と表現したのは、世界大会に出場した本人やチーム全員が「やはり世界一になりたい」という思いを改めて強くしたためだ。また、日頃から猿田彦珈琲を応援している人々に伝えていた「世界一になって戻ってくる」という約束も果たせていないため、「約束は継続中である」という意味も込めているという。
「一部のお客様にとっては、不快に感じられる表現であった可能性があることを、真摯に受け止めております。一方で本件は、猿田彦珈琲らしい、少し不器用で正直な姿勢を表した表現としてお伝えしたいという思いもありました。結果として、誤解や不快な思いを抱かせてしまった点については、重く受け止めており、皆さまからいただいたご意見そのものを大切にしています」
SNS上では、「惜」は、出場したバリスタたちに失礼ではないかとの意見もみられた。だが広報担当によると、垂れ幕を見た本人たちは、「『自分たちらしい』と誰よりも一番笑って受け止めて」いたという。
野澤バリスタと伊藤バリスタは再び世界1位を目指す
これまでコーヒーの国内大会で何度も優勝してきた猿田彦珈琲。さらに世界大会での優勝も目指すのは、「(同店が)目指している価値や姿勢を、世界の舞台で証明したい」という思いがあるからだ。また、ステークホルダーにも「世界チャンピオンという形で少しでも恩返しがしたい」と述べる。
同店は、より集中して練習できるトレーニングルームの整備や、専門のコーチによるトレーニング体制も構築している。
その上で世界1位を目指すための課題として、「今回の挑戦を振り返り、技術面・心構えの両面で、細部の詰めがまだ甘かったと感じています」と、広報担当は振り返っている。
今回の「惜」に関する批判に対し、同店では特別な対応をする予定はないという。広報担当は、「1位以外に意味がないなどとは、決して考えていません」と強調し、野澤バリスタと伊藤バリスタは、再び世界1位を目指す予定だと明かした。