息子のリアクションに怒り心頭
「そうだよなあ、碧! よく言った。親父、なんだよこれ! 碧がかわいそうだろ」
日頃から「お金は親を頼ればなんとかなる」「孫のためと言えば出してくれる」と考えていた悠介さん。秀夫さんはその本音が透けて見え、怒りをこらえ切れず、思わずその場で叱責しました。
「いい加減にしなさい! 金ばかり要求して、本当にそれが子どものためか? よく考えてみろ」
温厚な父の思わぬ剣幕に、悠介さんはただ黙りこむしかありませんでした。
「孫破産」の原因は“孫以外”にあることも…
近年、メディアなどで「孫破産」という言葉を目にする機会が増えました。これは祖父母が孫のためにお金を出し過ぎた結果、老後資金が底をつき、生活が立ち行かなくなる状態を指す言葉です。
なかでも、学費や習い事の月謝といった継続的な支出は、一度始めると数年単位で固定化され、途中でやめにくい性質があります。そのため、最も「孫破産」につながりやすいといえます。
では、なぜ破産するほどのお金を出してしまうのでしょうか?
本事例のように、子どもから露骨な無心があったとしても、「これはまずい」と気づいた時点で援助をきっぱりと断ち切ることができれば問題は大きくなりません。しかし、実際にはそれができず、破綻寸前まで援助を続けてしまう人も少なくないのです。
ずるずると続いてしまう背景には、自分の家計状況を正確に把握できていないパターンもあれば、「義娘の実家は100万円援助しているらしい」といった周囲との比較から見栄を張り、「お金がない」と言い出せないパターンなど、さまざまな事情があるようです。
しかしそれは、孫への愛情とは無関係であるケースも珍しくありません。
高齢夫婦の多くは、年金を主要な収入源とする「無職世帯」です。孫への援助が年金世帯の生活基盤を揺るがす可能性があることを自覚するとともに、「シニア世代はお金を持っているはずだ」というイメージを抱きがちな子世代に対しては、年金生活の実態を率直に伝えることも、ときには必要なのかもしれません。
叱責後に“連絡が途絶えた”息子家族のその後
秀夫さんが叱ってから、息子夫婦からの連絡は途絶えました。
(孫の習い事はどうなったのだろう、洋服は、日々の食事は……?)
そんな心配が頭をよぎることもありましたが、「親として必要な言葉だった」と後悔はしていなかったといいます。
そして数ヵ月後、久しぶりに悠介さんから電話がありました。
「娘の送迎用に検討していた高級車を諦めて塾代を捻出した」「複数あった習い事を本人に選ばせてピアノに絞った。ひとつだけなら自分たちの収入でなんとかなる」
……息子たちがようやく経済的自立への一歩を踏み出したと感じ、秀夫さんの目には思わず涙が浮かんだそうです。
高齢化が進む社会では、親自身が経済的に自立し、心身ともに健康でいることが、回り回って子どもや孫にとって最大の支援になるという考え方もあります。それぞれが将来を見据えた生活を送りながら、本当に必要なときに支え合える基盤を整えていきたいものです。
山原 美起子
株式会社FAMORE
ファイナンシャル・プランナー
