◆「人民元はゲームセンターのメダルと同等」?


これを寝かせておくだけでも、相当な利益が見込めるはずなのだが、なぜ現金化を急ぐのだろうか。中国に詳しいジャーナリストの周来友氏はこう語る。
「中国でいくらカネを持っていたって、それはゲームセンターのメダルのようなもの。いつ政府に没収されるかわからず、『手元にあるうちに中国国外に逃がしたい』と考える富裕層はとても多い。私財没収が法律で認められている中国では、ある日突然、資産を取り上げられるなんてことは実際に起きていますから。かつては深圳の印刷所から香港に輸出される出版物に現金を紛れ込ませたり、ゴールドをハンドキャリーで運ぶ手法が取られてきましたが、今その役割をポケカが果たしているということ。中国人は人民元よりポケカを信じていると言ってもいい」
たしかに中国は資本規制を敷いており、個人の外貨購入額を年間5万ドルに制限している。
違反者には高額なペナルティや禁固刑が科されるともいうが、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の試算によると、’24年6月までの第4四半期で40兆円近い人民元が中国から違法に流出したという推計もある。
◆世界中に大量流出する人民元マネーのカラクリ

「中国で発行されたクレジットカードを使い、日本でポケカを大量購入する。そして、日本や第三国で売却すれば、カード決済は人民元建て、売却益は海外に残る。つまり、資産の逃避が可能となります。これを中国にいる金主の要請を受けた地下銀行と転売ヤーが密に協力しながら二人三脚でこなし、人民元を円に替えているのです。金主が支払う手数料は10~15%ほどでしょうが、今の中国ならそれでもやりたいという人は多いのでは。そもそも、この方法は高級時計やハイブランドのバッグでも実践されてきましたが、保管や輸送にコストがかからず、売値と買値のスプレッドが3~4%ほどのポケカはそれよりも適している。実に理にかなった商売ですね」
日本から見て問題がないわけではない。奥窪氏が指摘する問題は根深い。
「’25年8月、ポケカはマクドナルドとコラボしましたが、中国人転売ヤーが殺到。カードだけ抜きとられて食品が大量に破棄されていました。日本の経済活動に寄与しているかといえば微妙です。中には資金力にものを言わせ、特定のカードを買い集めて価格をつり上げてから売却するなんて荒業を使うグループもいるようですし、既存のファンからしても迷惑な存在では」
本来の目的から逸脱したところで売買されるポケカたち。この不健全なブームが収まる兆しは、今のところない。

1963年、中国生まれ。私費留学生として来日し、1995年に東京学芸大学大学院卒業。司法通訳を務めるいっぽう、タレントとしても活躍

1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒業。日本の裏社会事情や転売ヤー組織を取材。『転売ヤー 闇の経済学』など著書多数
取材・文・撮影/週刊SPA!編集部
―[人民元よりポケカを信じる中国人たち]―

