
「億単位の資産を築いた」と聞くと、多くの人は派手な投資家や成功した起業家を想像します。しかし、実態はその正反対であることも少なくありません。職場にいる、ごく普通の会社員のなかにこそ、静かに「億」を成し遂げた成功者が潜んでいます。本記事では、佐藤健一さん(仮名)の事例とともに、長期の倹約と資産運用で成功を収めた人が直面する「出口戦略」の難しさについて、FP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。※本記事は実話をベースに構成していますが、プライバシー保護のため、個人名や団体名、具体的な状況の一部を変更しています。
「ケチな平社員」と呼ばれた男の正体
都内在住の元会社員、佐藤健一さん(仮名/65歳)は、大手企業を40年以上勤め上げましたが、役職は最後まで平社員のままでした。現在は66歳の妻と、郊外の小さなマンションで静かな隠居生活を送っています。
現役時代の佐藤さんは、周囲から「倹約家」という言葉では片付けられないほど徹底した生活を送っていました。昼食は社食かワンコインランチ、飲み会は「家で食べるから」とほぼ不参加。スーツはヨレても着続けるため最低限しか持たず、見栄を張ることは一切ありませんでした。
住居は早めに購入した郊外のマンション。電気・ガス・通信費は常に最安プランをチェックして都度見直し、支払いはすべてクレジットカードに一本化。購入先もポイント還元率を重視し、「なんとなく買う」という無意識の支出を徹底的に排除したのです。同僚からは「付き合いが悪い」「ケチ」「人生つまらなそう」と陰口を叩かれることもありましたが、当の本人はどこ吹く風でした。
実は、佐藤さんの金融資産は、1億円を超える驚異的な金額にまで膨らんでいたのです。
資産1億円を築いたワケ
佐藤さんが「億り人」になれた理由は、決して一獲千金ではありません。その手法は驚くほど地味で、論理的なものでした。
一つ目は、確定拠出年金(DC)の活用です。20年以上前、勤務先で制度が導入された当初から「税制優遇を受けながら長期で積み立てられる」というメリットに注目。投資先はすべて低コストのインデックスファンドに設定し、相場に一喜一憂することなく、淡々と拠出を継続してきました。
そして二つ目が、ビットコインです。世間がまだ「怪しい」「いつか暴落する」と騒いでいた時期から、佐藤さんは毎月3万円の積立をスタートさせました。さらに徹底していたのが、日常支出の“ビットコイン化”です。電気代やガス代の支払いをすべてクレジットカードで支払い、ポイントサイトであらゆる支払いで貯まったポイントをビットコインへ変換。いわば「1円でも多く、将来に回す」その姿勢が、周囲には“ドケチ”に映っていただけだったのです。
