◆子供より「詐欺師」の言葉を信じてしまう親たち
![老親を狙う[国際ロマンス詐欺]の恐怖](https://assets.mama.aacdn.jp/contents/210/2026/1/1768264380982_yeqfq0rjzto.jpg?maxwidth=800)
’25年のお盆、仙台の実家に帰省した会社員・高島大地さん(仮名・43歳)は、75歳になる母の異変に背筋が凍ったと打ち明ける。
「実家に帰るなり、母が『ウクライナに困っている人がいるの』『助けないと命が危ない』と、同じ話を何度も繰り返すんです。相手の職業を聞くと、ある時は医師、ある時は国連職員。話の辻褄が合わない。でも同居している親父は『母さんは昔から天然ボケだから』と、深刻には受け止めてなくて……」
母は2年前、物忘れ外来で軽度認知症の初期段階と診断されていた。家事は問題なくこなせていたため、家族の警戒心は次第に薄れていった。
その“隙間”に入り込んだのが、母のインスタグラムに届いた一通のメッセージだった。
「ガーデニングが趣味で写真を投稿していた母に、『あなたの花が戦場の希望だ』という外国人男性からDMが届いたそうです。母はそこから、一気にのめり込んでいきました」
◆送金した記憶すら抜け落ちる
後になって振り返ると、詐欺師は「普通なら気づく違和感」を、母が見逃してしまう状態を正確に見抜いていたように思えるという。「肩書がコロコロ変わるとか、話が少しずつズレていくとか、普通なら一度は疑うはずなのに……違和感を覚え続ける力が、認知症で少しずつ弱っていたんだと思います」
やりとりを重ねるうち、母の中には恋愛感情が刷り込まれていった。
「ある日、通帳を見て血の気が引きました。親父が定年まで勤め上げて貯めた退職金口座から、合計で300万円が送金されていたんです。慌てて父に知られないよう自分の貯金で穴埋めし、母に『これは詐欺だよ』と問い詰めました。でも母は『助けてあげただけよ』と」
送金の事実は、記憶からごっそり抜け落ちていた。
「具体的な日時や金額を示しても、しばらくすると『そんな話、知らない』に戻ってしまう。騙されたという自覚そのものが、消えていました」
表面上、生活は破綻していない。だが、母の記憶と財産、そして家族の信頼関係は、確実に踏みにじられていたのだ。

