どの会社も他人事ではない…中小企業ほど潜む「危険な構造」
ここまで読んで、「これは特殊なケースだ」「うちは大丈夫だ」と感じた経営者もいるかもしれません。しかし、筆者の考えは正反対です。この手の不正は、中小企業ほど起きやすいと考えます。その理由は明白です。
・信頼を根拠に、権限が1人に集中している
・他者によるチェックの過程が設計されていない
問題は「裏切った人間」だけにあるのではなく、「裏切れてしまう構造」にあります。
「不正が起きない構造」こそ、経営の土台
3,000万円という利益を出すのがどれほど大変か、経営者なら痛いほどわかるはずです。冒頭、社長は初詣で「会社が平穏に、一段上に進めますように」と願いました。しかし、その成長の原資となる利益が不正で消えてしまえば、「平穏」はおろか、会社を「一段上」に進める成長戦略など画に描いた餅に帰します。
筆者は、経営において一貫して「実行できる戦略こそが価値を持つ」と考えています。どんなに立派な理念や事業計画を掲げても、それを実行するための土台がなければ、ただの願望で終わってしまうからです。
戦略より実行、信頼より構造、精神論より設計。会社を守るのは、人の善意ではなく、不正を物理的に起こさせない仕組みです。社長が願った平穏と成長を両立させるためには、この仕組みづくりが不可欠といえます。
多くの中小企業が、この事件と同じ構造を抱えたまま、新年の本格的なスタートを切っているのではないでしょうか。「今年は飛躍の年に」と掲げた目標や事業計画も、その足元に「不正が起きてしまう構造」という穴が開いていれば、一瞬にして崩れ去ってしまいます。業務が本格稼働するいまこそ、自社の信頼のあり方と、それを支える仕組みの再点検に着手してみてはいかがでしょうか。
萩原 峻大
東京財託グループ 代表
