アクセスから旅の楽しみが始まる
ハンガリーの首都ブダペストは、街の中央をゆったりと流れるドナウ川を軸に、石造りの建築が連なる街並みと、あちこちに点在する温泉施設が共存する都市。観光と休息、文化と日常が自然に溶け合い、「今日はどこまで行こうか」と気負わなくても、一日がちゃんと充実する。そんな旅が成立する場所だ。
人口は約170万人。ウィーンやプラハと比べると街の規模は比較的コンパクトで、観光の中心エリアはドナウ川沿いを軸に数キロ圏内にまとまっている。徒歩はもちろん、路面電車(トラム)や地下鉄など公共交通機関も充実しているので、移動に追われる感じがない。この距離感も、ブダペストが暮らすように過ごす旅に向いている理由のひとつだろう。

今回の旅ではターキッシュ エアラインズを利用し、成田からイスタンブールを経由するルートでヨーロッパへ向かった。乗り継ぎは1回のみで、そのルートは驚くほどスムーズで時間効率もいい。午前中に成田を出発して、同じ日の夜遅くに目的地であるブダペストに到着した。
成田空港には、2025年2月にターキッシュ エアラインズのラウンジが新たにオープンし、フライト前の時間をワンランク上の体験へと引き上げてくれる。シャワー室や専用のワークスペース、快適なソファ席に加えて個室まで備わり、機能性と洗練された快適さが融合。トルコ料理から厳選された食事や軽食のセレクションを楽しむこともできるので、搭乗前から「旅が始まっている感」がありワクワクできる。


ヨーロッパ屈指の温泉都市
ブダペストにはヨーロッパでは少し珍しい、温泉文化が根づいている。市内には100以上の温泉源があり、現在も十数か所の温泉施設が稼働中。観光客向けというより、市民の生活にすっと溶け込んでいるのがこの街らしいところだ。
市民公園「ヴァーロシュリゲット」の中にある「セーチェーニ温泉」は、ブダペスト最大級の温泉施設で、屋外・屋内あわせて15以上のプールを備え、敷地も広く、観光客も訪れやすい。12月に訪れた際も、湯気の立ちのぼる屋外プールで泳いだり、縁に腰かけておしゃべりを楽しんだりする人の姿があった。

屋内には温度や用途の異なるプールが点在し、利用者の年齢層もさまざまで、療養やエクササイズ、あるいはただのんびりとする人々も。なので、どちらかというと「温泉に浸かる」というより、「温泉プールを楽しむ」といった感覚のほうが近いかもしれない。スパ施設も併設されているので時間があれば一日中過ごすこともできるし、観光の合間に1〜2時間立ち寄るだけでも良い体験となるだろう。
さすが歴史ある土地だけあり、セーチェーニ温泉の建築にも思わず見とれてしまう。写真はエントランスにて見上げたところなのだが、ネオ・バロック様式の壮麗な空間に天井の装飾やアーチ、やわらかな光の入り方まで美しい。

ヴァーロシュリゲット公園一帯には、温泉施設のほかにも文化施設が集まっている。なかでも、建築家・藤本壮介氏が設計した「ハンガリー音楽の家」は、公園の緑に溶け込むようなたたずまいが印象的だった。大きく開いた屋根やガラス面から自然光が差し込み、建物そのものが風景の一部になっている。

さらに、公園全体ではリゲット・ブダペストと呼ばれる再整備プロジェクトが進行中だった。これは文化施設と緑地を一体的に再生する取り組みで、季節ごとに表情が変わるのも魅力。冬にはアイススケートリンクも登場し、温泉で体を温めたあとに公園を散策するといった贅沢(ぜいたく)な流れも楽しめそう。このエリアだけでも、ブダペストでは過ごすことそのものを楽しめる街だと実感できる。
