日本で定時に帰るZ世代の若者が増える一方、ドイツ・イギリス・北欧では「サービス残業」が蔓延中…欧州の若者が“タダ働き”を選ぶ切実な理由

日本で定時に帰るZ世代の若者が増える一方、ドイツ・イギリス・北欧では「サービス残業」が蔓延中…欧州の若者が“タダ働き”を選ぶ切実な理由

かつての正義だった長時間労働は、「ブラック企業の証」に

ほぼ同じ時期に、「ブラック企業」という言葉も急速に広まりました。この言葉は、2000年代初頭にネット掲示板で使われ始めたと言われるスラングです。現在では、サービス残業やパワハラ、休日なしなどの劣悪な労働環境を強いる企業を指す言葉として広く知られています。

それまでよく見られた「仕事があるだけありがたいと思え」という言説は影を潜めました。そして、ブラック企業とされる会社は、社会から厳しい批判を受けるようになりました。

こうした背景から、近年では長時間労働は「非効率の象徴」「ブラック企業の証」と見られています。「ブラック企業」という評判が立つと、企業イメージに大きな打撃を与えることになります。

また、働く人個人にとっても、長時間労働をしていることは以前ほど熱心さや忠誠心の証にはならなくなりました。むしろ、効率的に仕事ができない、すなわち能力が低いことの証とさえ言われるようになったのです(これは正しい認識とは限りません)。

近年の若手社員の中にワーク・ライフ・バランスを重視する人が多いことも、この流れを促進しています。人材不足に悩む企業は、ワーク・ライフ・バランスを実現できる人事制度の導入や職場習慣の定着によって若年者を惹きつけ、引き留めようとしています。

以上のような事情から、日本でも欧米のような「成果で評価する」制度や習慣の定着を目指し「労働時間ではなく成果で評価する」という考え方が広まりつつあります。

成果主義が浸透する欧米にもある「時間=熱意」アピール

ワーク・ライフ・バランスを支援する制度の導入に関しては、イギリスやドイツ、スウェーデンなどの企業の事例がモデルケースとしてしばしば挙げられます。

また、残業という概念を事実上なくす裁量労働制の導入が議論されたときは、欧米の制度が比較対象として挙げられていました。そのためか「欧米では労働時間を使って熱意を示すことはない」と思っている人は少なくありません。

確かに、成果主義が浸透している欧米では、「何時間働いたか」よりも「どんな結果を出したか」が重視される傾向があります。しかし実際には、欧米の企業でも労働時間を使って熱意をアピールする行動が見られます(Bolino, 1999)。

かつての日本ほどではないかもしれませんが、たとえば早朝出勤や遅くまでの残業などによるアピールです。長時間労働で仕事への真剣さや責任感を示そうとする動きは、海外でも見られるのです。

早朝出勤が「やる気のある人」として評価されるアメリカ

たとえばアメリカでは、誰よりも早く出社する社員が「やる気のある人」「信頼できる人」として評価されることがあります。特に、大企業の管理職候補を選ぶ際には、このような「仕事に対する姿勢を印象づける行動」が実際の評価に影響を及ぼすこともあります。

成果主義の環境でも、処遇のすべてが成果で決まるわけではありません。努力している姿を見せることで、昇進や重要な仕事を任されることにつながる場合があります。同じくらいの能力であれば、一生懸命働きそうな人に仕事を任せたいと思うのは万国共通です。

「忙しいふり」をするスペイン人

スペイン企業を対象とした研究では、忙しくないのに忙しいふりをしたり、早朝や週末に出勤したりする従業員の行動が確認されています(Bolino et al., 2006)。

筆者も参加したスペイン企業の最近の研究では、こうしたアピールは「媚びている」と見られて評価が下がる場合があります。一方で、うまく行えば上司に好かれ、高評価につながることも示されています(Bande et al., 2024)。

あなたにおすすめ