評価を上げるために熱意をアピールするのは万国共通
労働時間で熱意を示す行動は、日本特有のものではありません。自分の評価を意識し、行動を調整する心理は、国にかかわらず共通しています。もちろん、その行動がどのように評価されるかは文化ごとに異なります。ただし、出社や退社の時間を使って働く姿勢を印象づける行動は、多くの国で見られます。
先ほど述べたように、このような個人的な自己アピールを社内政治とみなすかどうかは人によって異なります。また、状況によっても変わるため、一概には言えません。
以上の例から言えるのは、日本特有と思われがちな自己アピールの中にも、海外でも広く行われているものがあるということです。
「欧米は労働時間でアピールしない」という誤解の“真相”
では、なぜ日本では「欧米は労働時間でアピールしない」ということが広く信じられているのでしょうか? その理由の一つは、日本と欧米の人事制度や慣行の違いに関する認識です。
日本でも、成果主義の人事制度は広く導入されるようになりました。しかし現在でも、成果にかかわらず地道な努力が美徳とされる傾向があります。
「結果よりもプロセスが大事」と語られる場面も少なくありません。上司や同僚も「一生懸命働く姿」を見て評価する傾向も残っています。特に評価基準が曖昧なときには、労働時間が努力の証とみなされてきました。
一方で欧米では、「成果重視」「職務の明確化」が重視されていると言われます。特にアメリカでは、職務記述書(ジョブディスクリプション)に基づいて業務が割り当てられます。そして、その目標達成度によって定量的に評価されます。そのため、日本人の間では「海外では労働時間が評価に影響しない」というイメージが広まりやすいのです。
「欧米では長時間働いても評価されない」「欧米企業では労働時間の長さにかかわらず成果さえ出せば評価される」という認識があります。こうした見方は、日本の働き方改革やメディアでも繰り返し紹介されてきました。そのため「欧米には労働時間でアピールする文化がない」と多くの日本人が信じています。
しかし実際には、欧米でも早朝出勤や残業を通じて熱心さや責任感を示すことがあります(Bolino, 1999)。
日本のメディアで報道される「理想的な海外の働き方」
また、実際の労働時間の違いや、それに関する報道や啓発の影響も考えられます。たとえば
・欧米ではワーク・ライフ・バランスの考え方が浸透していて、早めの退社や長期休暇を大切にする姿勢が見られる。
・ドイツや北欧諸国では、夕方にはオフィスが閑散とする。これらの国々では、勤務時間内に効率的に仕事を終えることが評価される。
こうした姿が、メディアや研修などで「理想的な海外の働き方」として紹介されてきました。そのため、「海外では長時間働かない」という印象が形成されてきたのです。
一方で、日本では電通の過労自殺事件をきっかけに「長時間労働=悪」という認識が広がりました。その対比として「欧米=健全な労働文化」という構図も生まれました。
この対比は、日本の働き方を変える必要性を強調する目的では効果的でした。しかしその結果、実際には海外にもある「労働時間を使った熱意のアピール」が見過ごされてきたとも言えます。
