男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
—あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:3回のデートで関係は決まる。2026年、アプリ恋愛で「いい感じ」を本命に変える女の言動とは
赤坂の区役所で婚姻届を出した帰り道に、私たちは『虎屋菓寮』に立ち寄った。赤坂御用地を眺めながらお茶を飲み、瑛二と自然に笑い合う。
「これで、僕たち正式な夫婦だね」
「そうだね。これから宜しくお願いします」
ただただ、私たちの間に幸せな時間が流れていく。
昨年、瑛二と二人で行ったヨーロッパ旅行。その時にパリで、私は念願のプロポーズを受けた。
「沙穂ちゃん、結婚してください」
もちろん答えはYESだったし、大好きな瑛二からのプロポーズに、私は涙が止まらなかった。
「はい…瑛二くん、ありがとう」
この時は交際してわずか4ヶ月というスピードプロポーズで、しかも実際に籍を入れたのも交際して半年というスピード婚だ。
36歳の私は、どこかで結婚を諦めていた。それが、まさかの半年で結婚できたなんて...。いったい何がよかったのだろうか。
瑛二とは、マッチングアプリを通じて出会った。たくさんいい人がいる中でも、瑛二は目立っていたと思う。
外資系コンサル会社勤務の、32歳。爽やかな笑顔でイケメンだし、大学も素晴らしい学校を出ているだけでなく、年収も3,000万以上ときた。
「でも私は35歳過ぎているし…彼はモテそうだから、厳しいかな」
そう思いながらも「いいね」を押すと、意外にも、向こうからもすぐに返ってきた。そして何度かやり取りをしたのち、「東京エディション虎ノ門」の『Gold Bar at EDITION』で会うことになった。
お店のエントランスの前で待ち合わせをしたのだけれど、瑛二は写真で見るより、実物の方がさらに素敵だった。
「初めまして、沙穂です」
「初めまして、瑛二です」
お互いぎこちなく挨拶を交わし、とりあえず中へ入る。一杯ずつオーダーをし、軽く自己紹介が始まった。
「沙穂さん、お仕事は何をされているんですか?」
「私はM&Aの会社で働いてます」
「へぇ、すごいですね。ちょっと近い仕事なのかな」
そんな話をしていたけれど、良い感じの音楽と周りの喧騒に、私たちの距離は自然と近くなっていく。そして2杯目のオーダーをするタイミングで、本題に入った。
「瑛二さんは、どうしてアプリを?モテそうなのに」
「いや、それはこっちのセリフです。そろそろ本腰を入れて彼女を探そうかなと思いまして。沙穂さんは?」
「私は、真剣に婚活しようかなと思いまして。実はアプリを使うことに、最初は少し抵抗があったのですが…。友人たちが続々とアプリで出会った方と結婚をしていたので使ってみたんです。瑛二さんみたいな素敵な方がいて、嬉しいです」
「こちらこそ良かったです、沙穂さんと出会えて」
初対面でそんな言葉をもらえるなんて、嬉しすぎる。頬が熱くなるのが分かって、私は思わずカクテルを一口飲んだ。
まだ会って1時間ほどなのに、瑛二の醸し出す雰囲気が心地よく、なぜか不思議と安心している自分がいる。
「今日ありがとうございます」
お礼を言うと、瑛二は大きく首を横に振った。
「いえいえ、こちらこそ。お綺麗な方だなと思って、すぐに返信しちゃいました」
「そうなんですか?嬉しい」
もしかすると、最初から決まっていたのかもしれない。何となくお互いに、次に進みそうな気配はしていた。
そしてこの次のデートで、瑛二はちゃんと告白をしてきてくれた。
二度目のデートは、表参道にあるイタリアンで食事をすることになった。そしてコースもほぼ終わり、デザートが運ばれてくるタイミングで、急に瑛二がソワソワし始めた。
― この流れ、もしかして…?
先ほど飲んだワインのせいだろうか。私の鼓動は妙に速くなる。
すると食後のコーヒーを少し飲んだ後、瑛二がまっすぐ私の目を見つめてきた。
「真剣に、付き合ってください」
胸がいっぱいになるほど、嬉しい。今すぐ彼の腕の中に飛び込みたいくらいだった。けれど同時に、心の奥に小さな迷いが芽生える。
4歳年下の瑛二はカッコよくて、きっとモテる。それに、彼に結婚願望があるのかどうかも、まだわからない。
「瑛二さん、すごく嬉しいです。でも……私、36歳です。37歳までには結婚したいと思っています。もし遊びなら、本当に大丈夫なので」
そう言うと、瑛二は迷いなく、大きく首を横に振った。
「遊びじゃないですよ!それに年齢は、関係なくないですか?」
「そうですか?そう言ってもらえるなら嬉しいです」
「じゃあ…お付き合いして頂ける、ということで大丈夫ですか?」
「はい。宜しくお願いします」
「やった!!宜しくお願いします」
こうして、私たちは晴れて交際することになった。
交際してからも、瑛二は特に変わることもなく、ずっと素敵な男性だった。
最初は、お互い平日は忙しいため、基本的に土曜にどちらかの家へ泊まり、そのまま日曜はデートをして夜には解散…ということが多かった。
「瑛二くん、明日は忙しい?観たい映画があるから、一緒に行かない?」
「うん、いいね。予約しようか?」
「ううん、大丈夫。こっちでチケット取っちゃうね」
こんな、何気ないデートも楽しいし、嬉しい。
でもそのうち何となく週末の夜から一緒にいて、そのまま何連続か泊まる…ということも増えていく。
でも一緒にいる時間が長くなっても、一度もケンカをしたことがなかった。
そんな中で、秋のヨーロッパ旅行の計画を立てていたのだけれど、その予約の感じもとてもスムーズだった。
「じゃあエアーは俺が手配するね。沙穂ちゃんは、泊まりたい場所とかある?」
「パリでどうしても泊まりたいホテルがあって。そこは私が出すから、二泊はそのホテルを入れてもいい?他はもう少し予算を抑えたいな」
「もちろん。じゃあホテルは沙穂ちゃんに任せる。現地の食事代は、考えよう」
「OK!もし瑛二くんの方が、支払いが多過ぎたりしたら言ってね。あと、出発当日は瑛二くんの家から一緒に行くよね?パッキング面倒だな…」
最近、瑛二の家に泊まる頻度が高まり、少しずつだけれど、私の荷物が彼の家に増えていた。
でも旅行となると、私の家にある荷物も、瑛二の家にある荷物もまとめないといけない。その作業が、少し面倒だなとも思った。
「そもそもだけど、沙穂ちゃん、荷物を毎回家に取りに帰るのは大変じゃない?もう一緒に住む?」
そう言ってくれるのは嬉しいけれど、その前にやることがある。
「うーん。それは結婚してからだね。ちなみに、そろそろタイムリミットが迫っておりますので宜しくね〜」
「ん?何のタイムリミット?」
この発言を聞いて、私は膝から崩れ落ちそうになった。
「え?私の誕生日、4月なんだけど」
そう言っても、まだポカンとしている瑛二。その顔を見て、思わず突っ込まずにはいられなかった。
「交際する時に言ったでしょ?『37歳になる前に』って」
「あぁ、そんなことあったね」
― ダメだ…やっぱり瑛二くん、忘れてる。年下だし若いから、結婚なんてまだまだ先のことなのかな…。
そう思い、半ば諦めていた。
しかし結果として、瑛二はヨーロッパ旅行の際にプロポーズをしてきてくれた。
でも、どのタイミングで、いつ決意したのだろうか。
約束を守ってくれた瑛二に感謝しつつ、結局のところ何が結婚の決め手だったのだろうか、いつか聞いてみたいと思っている。
▶前回:3回のデートで関係は決まる。2026年、アプリ恋愛で「いい感じ」を本命に変える女の言動とは
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
▶NEXT:1月11日 日曜更新予定
男がわずか半年で結婚を決めた理由は?

