◆酔っ払って寝過ごし「延長料金払えない!」

古山:酔っ払って入室する人が多いので、ショートタイムで2〜3時間過ごすつもりが、寝過ごしてしまいそのまま朝を迎えてしまうということはよく起こります。本当ならニーキュッパで済ますつもりが1万円を超えてしまったとなると、「払えない」とか「払わない」とお客さんからフロントに電話がかかってくる。そうは言ってもこちらもお金を払ってもらわずに返すわけにいかないので、どうしても退室したかったら代わりに身分証とスマートフォンを置いていってください、そしてお金を持って戻ってきてください、という対応をせざるを得ません。
ある学生のお客さんは銀行口座にも払えるお金がなかったみたいで。マネージャーから「どうにかして金持ってこい」と言われて、身分証とスマホをマネージャーに預け、ホテルの前を通ったカップルに頭を下げて「お金を貸してください」と言ってまわったそうです。私はそんな彼の様子を明け方の退勤時に見かけました。

古山:他にも、部屋にもお風呂にも血溜まりが残っていたり、一緒に来たお客さんの片方が慌てて逃げていったと思ったら残された方の荷物が盗まれていたり。日々いろいろあるんですが、私は退勤の時間が来たら帰ってしまうし、あまり大ごとにしたくないお客さんも多いので警察沙汰にまでなることは少ないです。部屋の中で本当は何が起こって、その後お客さんたちがどうなったのか、私が知る機会はほとんどありません。
◆「底辺の仕事」と罵られ 曲に込めた思い
古山:延長料金についてトラブルになったお客さんから「お前、ばかだからこんな底辺職にしか就けないんだろう!」と罵られたこともあります。——ひどい言いがかり……。古山さんは「ラブホテルで働くということ」という曲を作られていて、今のエピソードも盛り込まれていますね。
古山:ラブホテルで働きはじめてからは、職場の人たちがみんな温かくて「ああ、好きな職場だな」と思っていました。でも周囲の評価は必ずしもそうではなくて。両親は「面白そうだからいいんじゃない?」という感じで反対していませんでしたが、親族には「4年も大学に通ったのに」、「ラブホテルで働いている人たちなんてろくでもないんだから」と言われて頭にきたこともありました。
そんなもやもやがあった上に、お客さんからも自分の上司にあたる人たちのことをズケズケ言われて「ここで働いている人たちのことを何も知らないのに」という思いが強まりました。決して「ラブホ清掃が底辺なんかじゃない」とか主張したいのではなくて、ラブホテルが職場として機能している、もう一つの日常のようなものを純粋に知ってほしいという気持ちが湧いて、曲ができていきました。
最近では職場の人の通勤ソングの定番に、今までの純烈に加えて私の曲が追加されたと聞いて喜んでいます。

