龍安寺石庭

世界に知られる枯山水の代表は、ほかでもない龍安寺石庭でしょう。故エリザベス2世やスティーヴ・ジョブスといった、一流の海外セレブリティをも感動させたこの庭園の魅力とは、どのようなものなのでしょうか。
方丈の縁側から眺める、壁に囲まれた平庭。白砂の上に配置された15個の石組は、一般には大海と島々を表現するといわれています。日本庭園の伝統的なモティーフである蓬莱島を重ね合わせた理想世界を表しているとも解釈されます。
極めて簡素な構成と豊かな余白は、ただ眺めるだけで心が整うような観照の空間でありながら、鑑賞者に自由な想像の余地を与えます。海洋風景や山々の連なり、あるいは虎の親子が川を渡る様子(虎の子渡し)を表現するという説もあれば、15個の石を一度に見渡すことができない配置から、禅における不完全性を象徴するという解釈もあります。じつに数十通り以上の解釈が存在する庭園なのです。

近年の研究成果によれば、実際にはすべての石を見渡せるごく狭い地点は存在することも分かってきました。しかし通常の拝観においては、やはりいくつかの石が視界から隠れることがほとんどでしょう。寺院の建立は室町時代にさかのぼりますが、庭園自体は江戸時代に改修されていることが分かっている一方で、確実な作庭者の意図は伝わっていません。今なお多くの謎に包まれた庭園空間なのです。
砂紋・箒目

枯山水の庭の白砂に描かれる「砂紋」(さもん)や「箒目」(ほうきめ)と呼ばれるさまざまな模様は、静かな水面、小波、さざ波、大波など、水のさまを表現したものです。そのなかには、「青海波」や「市松紋様」といった形式化された紋様もあり、それぞれに吉祥の意味合いを持ち、ほかの装飾美術と共通する意匠として見受けられる点も興味深いところです。
また、砂紋は一度描けば終わりというものではありません。枯れ葉が落ちたり、雨風にさらされたりすることで容易にも崩れるため、定期的な手入れが欠かせません。かつて砂紋を描くことは、禅僧の日々の修行の一環でもありました。一度作られた形がそのまま永続するのではなく、繰り返し引き直されることで立ち現れる無常と変化の美。そこにはまさに日本独自の価値観を見出すことができます。
