近現代の枯山水へ

室町時代の創成期を経た枯山水は、露地・茶庭や池泉庭園の一部にも取り入れられるようになります。たとえば銀閣寺庭園には、江戸時代の造営と伝えられる、円錐状の砂山「向月台(こうげつだい)」と、白砂を段状に敷き詰めた大きな砂段「銀沙灘(ぎんしゃだん)」があります。
白砂を敷き詰めるところに浄土的な清浄の世界観を表したという説がある一方、月の光が白砂を照らす観月の装置であったという説もあり、ここにも複数の解釈が存在します。いずれにしても、非常にモダンな造形性をもつ白砂面は、銀閣の建物を引き立てると同時に、庭園空間のアクセントとして秀逸な景観を生み出しています。

また、昭和の作庭家・重森三玲は、京都・東福寺方丈庭園の改修に際し、枯山水の伝統を取り込みながらも独自の作庭を行いました。古典的な手法を踏まえつつ、白砂と苔による市松模様や、北斗七星を意匠化して宇宙を表す構成など、その試みは、枯山水の精神や象徴・抽象表現を現代的に再解釈した代表例といえるでしょう。それはまた、モダンアートとしての庭園の創作を志向するものでもありました。

シンプルに抽象化された景観が、哲学や宇宙観までも表現しうる――その枯山水の魅力は、世界中の人々を魅了してきました。そして現在、枯山水がつくられる場は、歴史的な寺院等にとどまらず、現代建築にも広がっています。古典的な意匠を継承する庭も、革新的なデザインを取り入れた庭もまた、国内外で脈々とつくり続けられているのです。

えんどう・ひろこ/東京出身。慶應義塾大学卒業後、エコール・デュ・ルーヴルで美術史を学ぶ。長年の美術展プロデュース業の後、庭園の世界に魅せられてヴェルサイユ国立高等造園学校及びパリ第一大学歴史文化財庭園修士コースを修了。美と歴史、そして自然豊かなビオ大国フランスから、ガーデン案内&ガーデニング事情をお届けします。田舎で計画中のナチュラリスティック・ガーデン便りもそのうちに。
