
生前に子どもや孫に財産を無償で譲り渡すことで、相続税を軽減 · 減税できる「生前贈与」制度は、終活の一環としてできる相続税対策です。本記事では、保坂隆氏の著書『楽しく賢くムダ知らず 「ひとり老後」のお金の知恵袋』(明日香出版社)より、一部を抜粋・編集し、生前贈与の概要と利用上の注意点を解説します。
「生前贈与」を活用して相続税を減らす
終活の一環としてできる相続税対策があります。それは、生前贈与です。文字どおり、生前に子供や孫に財産を渡しておくことです。
最も代表的な生前贈与は「暦年課税」でしょう。これは、相続人1人当たり年間110万円までの贈与なら贈与税がかからないという制度です。
私の友人で旧家の跡継ぎの男性がいます。彼は学生時代から、この暦年課税を利用した節税対策をおこなってきました。その年数はおよそ40年にも達するでしょうか。それでも実際に相続がおこなわれた際には多額の税金を支払ったそうで、「長年の苦労も焼け石に水だったよ」とこぼしていました。
これは彼の実家が資産家だったからで、一般の家庭なら、たとえ10年間――つまり1,100万円を非課税で家族に残すことができたなら、その効果は非常に大きいと思います。
仮に、前項と同じように5,000万円の財産があったとしましょう。すでに1,100万円は暦年課税を利用して贈与済みだとすると、残りの財産は3,900万円。基礎控除額は4,200万ですから、生命保険に加入していなくても、非課税枠に収まるというわけです。
ただし、死亡前7年以内の贈与額は、相続財産に加算されます。
とてもありがたい制度なのですが、そのぶん、税務署も厳しく目を光らせているので、利用には注意が必要です。
たとえば、「わかりやすいように、子供や孫の誕生日に毎年110万円贈与する」といったように、毎年定期的に同じ金額を贈与するとします。この場合には「定期金に関する権利の贈与(決められた年数にわたり毎年110万円ずつの給付を受ける権利)」と見なされて贈与税がかかることがあるのです。
これを防ぐには、贈与するたびに贈与契約書を作成する、贈与の日や金額を毎年変える、実際に相続人の口座にお金が振り込まれたり、土地や家屋などの名義が変わっていることを示す証拠を残しておく、などの対策を取ることが必要です。
面倒だと思うかもしれませんが、家族にできるだけ多くの財産を残すためにも注意したいことです。
「相続時精算課税」のメリット・デメリット
じつは、生前贈与にはもうひとつ「相続時精算課税」という方法があります。これは、平成15年(2003年)に施行された制度です。60歳以上の親または祖父母から18歳以上の子供、または孫へ贈与する際に利用できる制度で、贈与者ごとに累計2,500万円相当の金品まで贈与税がかかりません。
また、令和6年(2024年)より年間110万円の基礎控除が新設され、この部分については累計する必要がなくなりました。
2,500万円ということは、「暦年課税」のおよそ25年分に当たりますから、こちらを選んだほうがずっと得のような気がします。しかし、そう考えるのは尚早で、この「相続時精算課税」にはいくつかの大きなデメリットがあるのです。
たとえば、このときに贈与された財産は先ほど説明した基礎控除までの金額を除き、相続財産に加算されます。相続時精算課税という名称は、この事実に由来しているというわけです。
また、いったん相続時精算課税を選択してしまった場合、暦年課税に戻せません。つまり、選択は慎重に考える必要があるのです。
ちなみに、将来値上がりが確実視されている財産(土地や株券)がある場合、この相続時精算課税を利用すべきといわれますが、先行き不透明な時代ですから注意が必要でしょう。
保坂 隆
保坂サイコオンコロジー・クリニック院長
