お団子を囲んで他愛もないおしゃべり
羽田さんは、このお店のおばあちゃんとの思い出をこう振り返ります。
「毎年、ドラマの撮影でお店に伺うと、おばあちゃんが満面の笑みで『また来てくれてうれしい、うれしい』って出迎えてくれるんです。そして毎年、『今年は88歳になりました』『89歳になりました』ってお歳を教えてくれるんです」
そんな、看板娘のおばあちゃんが居たのが、東京都北区の 平塚神社参道入口にある和菓子処「平塚亭つるをか」です。撮影のたびにおばあちゃんが「どうぞ」と手渡してくれていたのが、出来立てのみたらし団子。モチモチとした柔らかい団子と、甘じょっぱい餡がかかったみたらし団子は、このお店の看板商品です。

「ここのお団子の白くてフワフワ、モチモチした感じも、みたらし餡のやさしい甘さも、おばあちゃんの雰囲気にすごく重なるんですよ。おばあちゃんのかわいらしくて柔らかな人柄がそのまま形になったようなお団子です」
撮影の合間はいつも、羽田さんと伊東さん、そしておばあちゃんの3人で、みたらし団子を囲んで他愛もないおしゃべりをしたのだとか。当時を振り返りながら羽田さんは、「伊東さんとおばあちゃんが『年をとったけれど、お互いがんばりましょうね!』と励まし合ったりしていて。心が和む温かい時間でした」と微笑みます。
「おばあちゃんが帰り際にいつも『来年もまた来てくださいね。それまで私も元気でいますから』って言ってくれて、それに私が『また来年ね!』と答えてお別れをするんです。今思えば、おばあちゃんががんばっておられる姿に、私も励まされていたんですよね」

毎年繰り返されていた、再会の約束。しかし、ある年……。撮影で訪れた平塚亭に、おばあちゃんの姿はありませんでした。
「亡くなる直前まで、看板娘としてお店に立っていたそうです。その日は撮影が終わった後、近くでお花屋さんを探してお店に戻り、おばあちゃんに花を手向けてお別れをしました」
「でもね、おばあちゃんにそっくりな息子さんと娘さんが、お店を継いでいらして」と続ける羽田さん。
「おばあちゃんがいたときとおんなじ、ふっくら甘いみたらし団子を作ってくれています。だからひと口食べると、あのやさしい笑顔を思い出せるんです」
並んででも食べたい!たまらず頬ばることも
プライベートでも平塚亭をよく訪れるようになった羽田さん。平塚亭は行列ができる人気店としても知られますが、羽田さんはみたらし団子のためなら列に並ぶことも厭いません。
「列に並んで買い物をしていると、『おかしな刑事を見て来たんです!』と声をかけてくださる方も。ドラマはフィクションですが、そんなふうに喜んでいただけると、伊東さんと私の“父娘”が本当にここで生きているような気持ちになってうれしくなります」

みたらし団子はもともと、五体(人の体)をあらわす厄除けのお供え物。それを知る羽田さんは、必ず平塚神社を参拝してからお店を訪ね、みたらし団子を購入します。
「持ち帰ることも多いですが、待ち切れない、っていうときは、平塚亭さんのそばにあるイチョウの木の下で頬ばることも。お店を眺めながら、出来立てのみたらし団子を食べると、おばあちゃんのあの笑顔が思い出されます」
羽田さんはこのみたらし団子を、さり気なく日頃の感謝を伝えたいときの手土産としてもよく選びます。

「透明のパックにみたらし団子を並べて、フタを閉じて包装紙で包む。この、日本人の原風景に必ずあるような手土産感もすごく好きなんです。肩ひじ張らない感じが、身近な人への手土産にもぴったり。近所に住む友達や、日頃お世話になっているマンションの管理人さんにもよく差し入れしています」
やさしいおばあちゃんの笑顔を思い出すモチモチのみたらし団子。作り手の愛を感じるこの味を、羽田さんは自分を元気づけたいときや、誰かに「ありがとう」を伝えたいときの味として大切にしています。

