男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
—あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:アプリで出会った年収3,000万の外コン男性と交際半年で結婚。36歳女がスピード婚できた秘訣
久しぶりの、デートのはずだった。
この日は行きたい所があり、銀座で待ち合わせをして、買い物をしながらぶらぶらして、お茶をして、その後一緒にディナーができると信じて疑っていなかった。
「茜…。ごめん。他に好きな人ができた」
しかし会ってすぐに、交際して2年になる直也からそう告げられた私。
「え…?冗談、だよね?」
私たちの間に、冷たいビル風が吹く。観光客の笑い声が、私の耳を突き刺す。
「いや、冗談じゃない。ごめんね茜。一応、LINEとかじゃなくて、ちゃんと会って言ったほうがいいかなと思って」
その気持ちは嬉しいけれど、この寒い中、立ち話で振られるなんてどういうことだろうか。
私は体を震わせながら、銀座の街角で涙を流した。
直也とは、友人の紹介で出会った。といっても正式な紹介ではなく、たまたまホムパで一緒になり、なんとなく話した…と言ったほうが正しいかもしれない。
飲み足りなかった私たちは、近くのバーに2軒目として二人で行くことになった。
「茜ちゃんって、何をやっている人なの?」
「私はフリーで、フードコーディネーターをやってるよ」
「フードコーディネーター?」
「簡単に言うと、雑誌とかテレビとか…撮影の時に、食べ物を綺麗に見せたりする仕事」
「へぇ、そんな仕事があるんだ」
金融系の仕事をしている直也からして、私の仕事はまったく別ジャンルで、あまり知らない職種だったらしい。
そのせいかとても興味津々に聞いてきてくれて、初対面なのに3時間くらいは二人で話していたと思う。
「私の仕事って、同じシーンが二度とないから本当に楽しいんだよね。それが世に出て、形になる瞬間がたまらなく好きで。その分不安定だけど、そんなジェットコースターみたいな感じが意外に嫌いじゃなくて」
「茜ちゃんって、面白いね。個性的というか、他の子と違うというか。そこが、すっごく魅力的だと思う」
酔っ払っていたのか、そんなことを直也から言われた記憶がある。
その後何度か二人で会うようになり、気がついた時には交際に発展していた。
今から考えると、「付き合おう」という言葉なんてなかった。
それでも直也のことを私は好きだったので、「一緒にいられるだけでも幸せだな」なんて思っていた。
ごく自然と一緒にいるようになっていた私たちはお互いの家の鍵も持ち合い、どんどん二人で過ごす時間が増えていった。
長く一緒にいても、直也と大きなケンカをしたこともないし、大きな衝突もしたこともない。思い返してみても、別れの原因となるような出来事は、本当に何もなかった。
それに、直也からすると、私と交際することによるマイナス要素は何もなかったと思う。
「茜、今日のご飯何?」
「今日は、直也の好きなハンバーグにしようかなと思って」
「マジ?嬉しい!」
基本的に、ご飯と掃除は私の担当だった。
職業的に“料理を作るのが好き”、ということもある。ただ数回ほど、直也が食事の準備をしてくれたことがあったけれど、直也が料理をした後のキッチンは悲惨な状態になっていた。
「直也、ご飯を作ってくれるのは有り難いけど…その前に、キッチンを綺麗にしてくれない?後片付けまでを含めて、料理だからね」
そう伝えると、直也は完全にショボくれている。
「あー…。俺、片付け苦手なんだよね」
「そうなんだ…」
この一件以来、直也は料理をしなくなったし、私も心のどこかで諦めた。
それに、掃除も私がやった方が早いし綺麗になる。加えて、私自身が家事をすることが嫌いではなかったので、まったく苦に思っていなかった。
「直也、食器だけダイニングテーブルに運んでもらっていい?」
「は〜い」
出来立てのハンバーグを出すために、テーブルの用意などはしてくれる直也。
「直也、ありがとう」
「これくらいは、俺にだってできるよ」
食器を並べたくらいで少し威張る直也が、私は可愛くてたまらなかった。
普段、外でバリバリ仕事をしているはずの直也が、家ではかなりぐうたらしている。そのギャップが、私は好きだった。
他の人には見せない、自分だけに見せる顔…。
そんな直也を見るたびに、“自分は特別だ”と思って嬉しくなる。
「いただきます。茜、いつもありがとう」
「いえいえ」
こんな平和な日常が、続いていたはずだった。
順調そのものだった私たちの交際。ビッグウェーブもなく、凪のような二人の関係。
私も直也も33歳で、もう落ち着く年齢だ。だから、この関係性に満足していたし、とにかく居心地が良かった。
ただ一つだけ文句があったとするならば、直也の怠惰さが増していったことだろうか。
交際当初、週末になると二人でよく出かけていた私たち。しかし交際1年目にもなると、直也は出かけるどころか家でダラダラと過ごすようになっていた。
「直也、何時まで寝てるの?もう10時だよ」
「え〜。今日、土曜なのに」
布団を剥がしてもなかなか起きないし、何よりベッドから出てこない。
「朝ごはんは?食べるでしょ?」
「うーん。朝ごはんはいいや。いらない」
「え〜せっかく用意したのに」
「ごめん。後で食べるから、置いといて」
「いいよ、お昼は別で作るから」
そんな会話が頻繁に起こっていた。
さらに直也は、交際当初は二人で外へよく飲みに行っていたのに、外食をほぼしなくなった。
「直也。今日の夜、近くでもいいからご飯に行かない?」
「いいよ。この前の焼き鳥屋さんでも行く?」
「うん!」
以前は、二人で深夜まで飲み歩いたこともある。でも最近は、こうやって頑張って外へ食事に連れ出しても、直也はノンアルで一滴も飲まない。
別にそれは構わないのだけれど、お酒を飲まないと、食事が信じられないくらい早く終わってしまう。
「よし、帰ろう。ご馳走さまでした」
そう言いながらパパっと会計を済まし、いつもさっさと店を出てしまう直也。
― 私といる時、ちょっと手を抜きすぎじゃない?前はもっと楽しかったのに…。
でも、普段付き合いで飲まないといけないから、私といる時くらいはお酒を抜きたいのだろう。心を許してくれている私だから、できること…。
そう思っていた。
しかし、ここ2ヶ月くらい、直也との距離がさらに開いていくのを感じていた。
ある日洗濯をしようと思い、脱ぎっぱなしになっていた直也のズボンのポケットを、ティッシュとか紙類とか…洗濯した時にゴミになりそうな物が入っていないか、何気なしにチェックした時のことだった。
彼のポケットから、一枚のレシートが出てきた。
それは高級ホテルに入るフレンチレストランのレシートで、コースが2名分となっている。それに、良いワインも開けたのだろう。高額である以上に、2名分というのが気になる。
「何これ…?」
レシートに記載されている日付を見てみると、ちょうど私が実家に帰っていた日だった。
慌ててその日のLINEを遡って見てみると、直也からは22時くらいに「おやすみ」と入っていた。
「これ、誰と行ったの…?」
そう思いながらも、結局聞けない自分がいた。
聞いてもどうせはぐらかされるだろうし、決定的な証拠もない。「クライアントと行った」と言われたらそれで終わりだ。
そんな悶々とした気持ちを抱えていた矢先、直也から「他に好きな人ができた」と言われてしまった。
― その、フレンチに一緒に行った女ってこと?
こんなにも大好きで、大切にしてきた。一生懸命尽くしたつもりだ。それなのにどうして…。
ひたすら悔しくて、悲しくて。ひたすら涙が流れている。
▶前回:アプリで出会った年収3,000万の外コン男性と交際半年で結婚。36歳女がスピード婚できた秘訣
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
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