◆収入が「エリアガチャ」で決まる宅配業界
宅配の世界はもっと露骨だ。どのエリアを任されたかで、収入はほぼ決まる。商流中心で再配達が少ないエリアなら、さほど体力を消耗せずとも生産性は上がり稼げる。しかし、住宅地で、さらにマンション密集地のエリアであったら、話は別だ。時間指定が多ければ多いほど、何度も同じ建物を行き来する羽目になる。当然、生産性は下がる一方で、稼ぎは増えない。
周囲にフォローしてくれる仲間がいればいいが、「もっと早く回れ」「もっと積め」と責められるばかりではどうしようもない。結果、無理な運転による事故、無理な駐車による駐車違反、無理な判断によるクレームなどが積み重なっていく。
辞めていく人ほど「自分が遅いだけ」「要領が悪いだけ」と思い込むが、多くの場合、それは本人の問題ではない。宅配ドライバーライフがどう転ぶかは、天のみぞ知るという話なのだ。
とはいえ、宅配業界の構造は変わりつつある。今まで、嫌な荷物、エリアを担当していた宅配会社の社員の負担が軽減している。決して嫌な荷物、エリアがなくなったわけではない。コロナ禍を境に個人事業主ドライバーが増えた。そして、そのしわ寄せは、その個人事業主ドライバーに来ているのだ。また、個人事業主ドライバーは、「個数単価」が高くても、再配達・待機時間・ガソリン代などの維持費が自腹というケースがほとんどであり、思っていたほど稼いでいないとうのが現実だ。
◆最大の罠は「我慢すれば報われる」
一番危ないのは、「今月だけ頑張れば」という考え方だ。そうやって自分を誤魔化し続けるうちに、それが常態になる。そして、事故や体調不良で車両が止まった瞬間、収入は一気にゼロになる。会社は守ってくれない。自分の身を守れるのは自分だけだ。稼ぎたいなら、会社を渡り歩く勇気を持つこと。そして、自分の身体とリスクを分析したうえで、冷静な判断力を培う必要がある。
やりようによっては年収アップは可能である。ただ、そのためには単に仕事ができること以上に「情報を取りにいく姿勢」が大切だ。ゆえに「言われたことだけやりたい」「我慢すれば報われる」と考える人には厳しいかもしれない。努力が収入に直結する世界であると同時に、搾取されやすい世界でもあるからだ。
タクシーも宅配も、夢のある仕事ではない。だが、構造を理解したうえで選ぶなら、まだ勝負できる仕事だ。
<TEXT/二階堂運人>
【二階堂運人】
物流ライター。ライター業の傍らタクシードライバーとして東京23区内を走り回り、さまざまな人との出会いの中から、世の中の動向や世間のつぶやきなど情報収集し発信する。また、最大手宅配会社に長年宅配ドライバーとして勤務した経験とネットワークを活かし、大手経済誌のWEB版などで宅配関連の記事も執筆する。タクシー・宅配業界の現場視点から、「物」・「人」・「運ぶ」・「届ける」をそれぞれハード(荷物・人)だけではなく、ソフト(心と気持ち)の面を中心に記事を執筆中。ブログ「吾は巷のインタビュアー!」

