いつまでも輝く女性に ranune
「マムシ坂」を駆け上がり「ハキリアリ」に会いに行く。研究のため自腹16万円、アリに注ぐ情熱の正体

「マムシ坂」を駆け上がり「ハキリアリ」に会いに行く。研究のため自腹16万円、アリに注ぐ情熱の正体

研究者というと、大学にこもっているイメージがあるかもしれない。だがアリの研究をする村上貴弘氏は、フィールドワークに耐える体力をつくるため、毎朝ランニングするのが日課という。ここでは、普段からどのように体力づくりを行っているのかを紹介する。さらにアリ研究者ならではの“特殊”な習慣とは…?

※本記事は、岡山理科大学理学部動物学科教授の村上貴弘『アリ先生、おしゃべりなアリの世界をのぞく』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。

働かないアリ過労死するアリ
ハキリアリ

◆毎日の日課は、ランニング通勤と葉っぱ採り

毎朝8時30分、ランニングシャツに短パン、足元はワラーチという姿で家を出る。体を動かすのは中学時代からの習慣だけれど、大学院生になってから30年あまり、フィールドワークに耐える体力をつけるため常に体を動かすよう意識している(雨の日は歩きで、ちょっと疲れていたら自転車だ)。

ワラーチというのは、メキシコ山岳民族ララムリ(タラフマラ族)が履いているサンダルのことだ。最近ではランニング用のおしゃれワラーチも売られているが、僕はビブラムシートという登山靴の補強材を使って、自分の足に合わせて自作している。

足幅が極端に広い僕にとって、ワラーチは生まれて初めて出合った足が痛くならない履きものだった。小さい頃から合わない既製の靴に足を押し込んできた。かわいそうな僕の足の小指は常に靴に圧迫され、爪が上にしか伸びなくなってしまっている。ワラーチと出合い、ようやく解放された気がした。

以来、ハードなフィールドワークを除き、季節を問わずワラーチで過ごしている。大学に行くときも家族とのおでかけもワラーチ。テレビに出演するときもワラーチ。学会に出るときもワラーチだ。

大好きなサイト『デイリーポータルZ』でララムリは山でもワラーチで走っているという記事を見て、僕もワラーチでちゃんと走りたいと思った。そこで、2017年頃からワラーチを履いてのランニングに力を入れるようになった。九州大学時代にランニング通勤を週一ではじめ、2019年の福岡マラソンではフルマラソンに初チャレンジして、無事完走。2023年に参加したモンゴルの草原マラソンでもワラーチはモンゴルの草原をしっかり踏み締め、僕を気持ちよく前に進めてくれた。

◆坂だらけの過酷ラン通勤

単身赴任をしている現在。自宅アパートから職場である岡山理科大学までは2・3キロほど。距離はないが、学校に到着する手前に急な坂がある。「マムシ坂」と呼ばれるこの坂は、急勾配(最大斜度30度)なうえにヘアピンカーブが続くため、バスも時速15キロ程度しか出すことができない。

ここの上り坂はなかなか慣れない。ゆっくりと一定のリズムで足を運び、なんとかクリアするしかない。脳内では、通学バスと競争しているのだが、実際にはゆっくり登るバスよりもさらにゆっくりとしか走れない。

ランニング通勤をしながら、途中、寄り道をするときもある。朝の採れたて葉っぱを、大学にいるハキリアリたちに持っていくためだ。

ハキリアリが好む(というか、キノコが好む)葉っぱは、日本では決まっている。スイバやギシギシといったシュウ酸たっぷりの植物が今のところいちばん好きだ。以前、行なった実験ではクリがいちばん好きだった。一方で嫌いな植物はサクラとツツジ。サクラの葉に含まれる芳香成分(桜餅のあのにおいのもと)である「クマリン」、ツツジに入っている「ベンツアルデヒド」が嫌いなようだ。

どこで何が採れるのかはすでに頭の中に入っている。1か所から大量に採ることはできない。自宅から学校の間で何か所か〝収穫ポイント〟があるので、ローテーションで回る。草刈りや剪定の業者が入っていたら大ショック。だが仕方ない。しょんぼりしながら、別のポイントへと向かう。


配信元: 日刊SPA!

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