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「マムシ坂」を駆け上がり「ハキリアリ」に会いに行く。研究のため自腹16万円、アリに注ぐ情熱の正体

「マムシ坂」を駆け上がり「ハキリアリ」に会いに行く。研究のため自腹16万円、アリに注ぐ情熱の正体

◆ハキリアリ輸入の大騒動

ハキリアリの行進5
長い列を作って行進しているハキリアリ
当時在籍していた九州大学の研究室は二重扉にはなっていたのだが、鍵がなく、かけかえに4万円もかかった。パーテーションの隙間をプラスチックボードと粘着テープで入念に塞ぎ、鍵付きの棚も用意した。飼育環境は整った。

ギリギリで許可が下り、オランダのアリ屋さんからハキリアリを購入。その頃には研究費を使い果たしていたので、ここからは自腹だ。ハキリアリのお値段16万円也。ハキリアリを引き取るための航空券代や宿泊費、レンタカー代は合わせて30万円也。

そんな苦労(と出費)を重ねてようやく九州は福岡に、ハキリアリをお迎えできたのだ。うれしくて幸せで、毎日ずっとハキリアリを眺めていたら、大学事務の方から「村上先生、アリばかり眺めてないで書類送ってくださいね!」と叱られる始末。

そして、さらに1年後。2024年4月に岡山理科大に研究の場を移すことになった。ありがたいことに、理科大には立派な飼育設備が整っていた。これなら文句も言われまい。ところが、植物防疫所の審査の際、担当の方からまさかの指摘。

「こちらの飼育部屋には非常口がありますので、二重扉とは認められません。中をパーテーションで区切ってください」

……そんな!大学が用意してくれた飼育部屋には消防法上必ず必要な非常口があり、外と直接出入りができてしまう。それでは二重扉にならないため対策が必要とのことだった。

ならばと、鍵付きのパーテーションの設置を業者に相談すると、出てきた見積額は70万円。その年の大学から支給される僕の個人研究費は66万円。パーテーションの設置だけで研究費がすべてなくなってしまう。というか、マイナスだ。

ハキリアリが手元にあって研究できるのは僕の最大の強みになる。だからどうしてもここはクリアせねば。にしても、70万円は痛い。ということで、いくつもの業者さんに見積ってもらい、なんとか安いところを見つけた。改めて環境を整え、ようやく、岡山理科大学にハキリアリをお迎えすることができた。やれやれ。

【村上貴弘】
岡山理科大学理学部動物学科教授。1971年、神奈川県生まれ。茨城大学理学部卒、北海道大学大学院地球環境科学研究科博士課程修了。博士(地球環境科学)。研究テーマは菌食アリの行動生態、社会性生物の社会進化など。NHK Eテレ『又吉直樹のヘウレーカ! 』ほかヒアリの生態についてなどメディア出演も多い。
配信元: 日刊SPA!

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