◆仕事もお金も必要ない自然共生型の「無職」
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2年前までは北海道でカフェを営んでいたが、「次第にモノを持つ暮らしに疑問が生まれた」という。
「車は維持費がかかるし、家は手入れに手間もお金も必要。所有するから、お金も時間も奪われるんです。私はよく登山をしますが、大きな木は屋根になるし、葉っぱは器になる……自然にはすべてがあると気づいてしまった。ほどなく、自然のなかに身を任せて生きようと決意しました」
◆新たに始まった“楽園探しの旅”
坂井さんが追い求めた「好き」は自然だった。経営するカフェや家財道具を処分し、’23年に現金数万円とリュック一つで旅に出る。最初に辿り着いたのは西表島だった。なんとも大胆な決断。しかも「当初は働くつもりがなく野宿をしていた」というワイルドぶりである。「でも島の人とのご縁で住まいや仕事に恵まれて。宿泊施設の単発仕事で月収は8万円ほどだけど、寮住まいで食費もかからないので十分でした。ただ、西表島は私にはちょっと寒くて(苦笑)。
そこから私の“楽園探しの旅”が始まりました。理想は水に恵まれ、木々に実がなり、大型の獣がいない、アダムとイヴが暮らしたような小さな島。まだ理想の楽園には辿り着けていないんですけどね」
◆住み込みで働く理由は…
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「実は、楽園の候補として海外の離島に目星をつけていて。辿り着くための準備資金と、両親への仕送りのために貯めてます。元夫と離婚後、離れて暮らす子供もいるのですが、いつか遊びに来られる場所を用意したいんです。
とはいえ私自身はお金は一切いらないので、いつでも完全な無職に戻れます。無職でお金がなくても、誠実に生きていればご縁で道が開けますから」
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◆変化が激しい時代を生き抜く3つの働き方
坂井さんのライフスタイルを、尾原氏も肯定的に捉える。「変化が激しい時代を生き抜くには、3つの働き方があります。1つ目は、『好き』を仕事にする。2つ目は、宮大工のような伝統職でコツコツ働く。昔から残り続けたものは、今後もなくなりませんから。そして3つ目は、永遠のフリーターとして楽しんで働く。
僕が住むバリ島はこういう人が多く、日々の恵みを神に感謝し、今を生きて楽しむことがすべて。それでも生活できるのは、バリ島は温暖で水に恵まれ、二期作で稲作しているからです。バナナやヤシがそこら中に生えていて、鶏は放し飼いにしておけば自然に育つ。
いわば、現物支給でベーシックインカムが整備されているようなもの。坂井さんの選択はある意味合理的です」
ストレスだらけの社会でガマンしながら生きるのも限界を迎えつつあるのか。無職を満喫する中年世代から学べることは多そうだ。
【IT批評家 尾原和啓氏】
経産省対外通商政策委員などを歴任。『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書』(NewsPicksBook)など著書多数
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取材・文/週刊SPA!編集部
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