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ダイエットにまつわる危険な誤解…減量中は「水分摂取量」を増やしたほうがいい理由【医師が解説】

ダイエットにまつわる危険な誤解…減量中は「水分摂取量」を増やしたほうがいい理由【医師が解説】

ダイエットをしていると突然体重が減りにくくなったり、まったく減らなくなったりすることがあります。そのようなとき、焦って対応を間違えてはいけません。肥満・脂肪肝の専門医である尾形哲氏の著書『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術【増補改訂版】』(KADOKAWA)より、42歳女性の事例をもと、誤解が多い「ダイエット」と「水分」との関係についてみていきましょう。

〈本記事の登場人物〉

■中川 由美さん(42歳・女性)

中学2年になる娘をもつ母。肥満解消と脂肪肝・糖尿病改善を専門とする『スマート外来』で精密検査を受けたところ「脂肪肝」になっていることが判明し、改善のためにダイエットを開始する。医師と相談して3ヵ月で5㎏痩せることを目標に定め、食生活を見直すことで着実に体重が減っていたが……?

目標達成ならずも甘いものを食べなくても平気に!

「中川さん、お菓子コーナーの商品陳列(ちんれつ)お願いしてもいいー? それが終わったら、お昼休憩にしていいからー」

いつも元気な店長の明るい声が響(ひび)いた。

「はいっ。わかりました!」

まずは駄菓子(だがし)ゾーンから。小さな子どもたちが手にしやすいように、棚(たな)の下のほうに。ついついパッケージの裏をチェックしてしまう。

前回の受診時のO先生※の話を聞いてから、どうも食品の栄養成分表示が気になってしかたないのだ。先生が言ったとおりだった。「果糖ぶどう糖液糖」は、ありとあらゆる食品の成分表示欄に悪気なんてなさそうにその名を連ねていた。

O先生:由美さんが通う『スマート外来』で由美さんを担当している医師。

チョコレートコーナーでは、低糖質の高カカオチョコレートが売れ筋のようだ。パッケージには腸内環境をよくするとか美や健康のためにとか心惹(ひ)かれるワードが並んでいるが、本当のところはどうなんだろう。

次は、スナック菓子コーナー。あー、このポテトチップスよく食べていたな。おいしいんだよね……。おっと、危ない。肝臓の脂肪を増産させるところだった。

パート帰りには惣菜コーナーにお世話になりながら、今のところお菓子を買うことは避けられている。勤務の休憩中も甘いものに手を出さないように、小説を読みながらハーブティーでリラックスすると決めた。

なのに、なのにだ。体重が減らない。

あまりに減らないので、お風呂に長めに入って汗をかいてみたり、水分の摂取を控えてみたり……。確かに空腹感は減ったけれど、やっぱりタンパク質をプラスしたのが原因では? この梅雨空(つゆぞら)と同様、どんよりした気持ちで受診日を迎えた。

ダイエット中の「水分控え」は逆効果

「由美さん、こんにちは。調子はいかがですか?」

先生は変わらない笑顔で迎えてくれた。でも、私は先生に合わせる顔がない。

「体重、1.5㎏しか減らせませんでした。だめですね、私……」

「そんなことはありませんよ。食事記録を見せてもらいましたが、主食の量を守りつつ、野菜たっぷりでタンパク源も加えられたことがわかります。由美さんの食事方法は間違っていませんよ。それに、血液検査の結果はAST27、ALT50、γ-GTP18まで下がっています。すばらしい結果です」

すぐに気持ちは上向かなかったけれど、肝臓のことを思うと私に残された選択肢は1つだけ。元気な肝臓を取り戻すことだ。ありのままを先生に話そう。

「体重が減らないことで焦って、たくさん汗をかくまで湯船に浸(つ)かったり、水分摂取量を減らしたりもしました」

「それはかえって逆効果です。水を飲んでむくんで太るというのは誤解ですし、体重が増えても一時的なもの。お風呂で汗をかいたり、水分を控えたりしても、脂肪は落ちません。むしろ、体内の水分が少ないと肝臓への血流の量が落ちて、太りやすくなります。減量中だからこそ、水やお茶は意識してたっぷり飲むといいですよ」

「そうですよね。わかってはいたんですけど……」

「食事の前後30分の間にスクワットをするといいですよ。机かイスの背もたれに両手をかけた状態でゆっくり行うと安全です。10回2セットを1日1回から始めてみてください。大きな筋肉を鍛(きた)える筋トレになりますし、むくみの解消にもよっぽど効果的ですよ」

〈先生からの処方箋〉

減量中は水を普段より多めに! 減らしても、体から水分が減るだけで脂肪は落ちません。

尾形 哲
長野県佐久市立国保浅間総合病院
外科部長/「スマート外来」担当医

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