ただ現実は、そううまくいくことばかりではない。世代が違えば価値観も異なる。息子や嫁の立場から、腹の立つこともあるだろうが、姑たちもまた、その関係性に悩むことがあるのだという。

今回は昭和世代の女性たちに、姑の立場から見た近居の暮らしのリアルを聞いてみた。
◆嫁とは1週間、口をきかないことも
「長男一家とは同じ敷地内に家があって、毎日のように顔を合わせてます。孫は年中うちの居間で過ごしていてね。うちにおもちゃやら学校のものやら何やらいろんなものを持ち込んできて、すぐ部屋が散らかるので困ったもんです」(Aさん・70代女性)
限りなく同居に近いような暮らしをしているらしいAさん。境界線のあいまいな暮らしにうんざりしているかのような口ぶりだが、むしろ表情はどこか嬉しそうに見える。
「ご飯もよく一緒に食べます。この前なんか、嫁さんがいないときに大きい孫たちが友達を呼んで、うちで焼肉パーティーをしてね。なんで私に黙ってやるんだって言って、嫁さん怒っちゃって1週間口きいてくれなかった、まったく! アッハッハッハ」
Aさんは、やはり嬉しそうだ。本人に言うと怒られそうだが、嫁とのやりとりを楽しんでいるのではないかと思う。楽しめる性格、というところが大きそうだ。
「そのあと嫁さんのお父さんが足をケガして大変そうだったから、鍋いっぱい大根煮てあげたら、お父さん美味しくって汁まで飲んでたよって、1週間ぶりに嫁さん話しかけてきたんだよねえ、まったく」
胃袋を掴むのが上手なところはさすが。怒っているようで嫁の父親にも優しいAさんだった。とはいえ、ストレスがたまるのだという。
「私も腹の立つことは山ほどあるんだけど、喧嘩になっちゃうからガマンしてます。どうしても言いたいときは息子に伝えるよ。これでも“ばあば”は遠慮してるんです。あとは友達と会ったときにしゃべって発散、発散!」
女性はおしゃべりで発散できる場があれば強い。息子、そして孫も、“かすがい”になっているようだ。
「孫が直接、LINEくれて『駅まで車で迎えに来て!』なんていうこともよくあります。大変だなと思っても可愛いからね。嬉しくて迎えに行っちゃいますね」
◆“お義母さん”って書かれるとひどいなって思う
しかしながら、誰もがAさんのようにハッキリと嫁に意見を伝えられるわけではない。「Aさんのところは、話を聞いてると言いたいこと言いあって仲良さそうでいいなあって羨ましい。わたしはお嫁さんにも息子にも遠慮しちゃうんです。息子はお嫁さんの側についてるって感じだから」(Bさん・70代女性)
息子に話を聞いてほしいと思いつつも遠慮してしまうBさん、嫁とももう少し距離を縮めたいけれど、嫌われたくないし嫌いたくない、微妙な心持ちだそう。
「この前はお嫁さんがコロナになっちゃって、買い出しに行ったり掃除したり、孫の面倒もせっせと見ました。洗濯物も山盛りでね。疲れたけど手伝ってあげられてよかったって思ってます。ただ……」
おとなしそうなBさんが顔をしかめた。
「治ってからお礼のLINEをくれたんですけど『お義母さん』って書いてあったんですよ。あれは、悲しいというか、ちょっとひどいなって思いました。実のお母さんに送るメッセージに書くならわかるんだけど、わたし宛に書く?って」
確かに、わざわざ変換しないと「お義母さん」とは出てこない。きっと深い意味はなかったのだろうが、Bさんにとっては残念なことだった。直接やめてほしいと伝えることはできなかったそうだが、後日送られてきたメッセージでは「お母さん」表記に変わっていて、ほっとしたそうだ。
「そのあと実は、わたしもコロナにかかってしまいました。孫にうつしたくないから、看病とか来なくていいって言ったんですけど、お嫁さんがゼリー飲料とかいろいろ買って持ってきてくれたんです。嬉しかったですね」
姑の世代であっても、言いたいことが言えず遠慮している人がいる。話を聞いていると、この先、Bさんとお嫁さんはもう少し距離を縮められるのではないか、という気がした。ただ、遠慮と気遣いの境目がどこにあるのか、共通認識を持つのはなかなか難しいところかもしれない。

