◆“これだけやってあげたんだから”って思うとダメ

「息子一家はうちの隣に家を建てて住んでいます。孫が小さいときから。隣とはいえ、完全に生活は分かれているので、行き来をする理由をつくらないと、孫にもなかなか会わないままどんどん育っちゃう。それは寂しいと思って」(Cさん・70代女性)
Cさんは毎週末、昼食を作って息子一家を“ばあば”の家に呼ぶことで、気軽に行き来できる機会を作った。
「毎週、お昼ごはんを用意するのは大変といえば大変でしたけど、一緒に過ごせる時間が増えて嬉しかったですよ。昼間忙しくて予定が合わないときは、朝ごはんをうちで出しました」
すごい! 嫁の立場だったらどんなに助かるだろうか。とはいえ、感謝が飛び交ってすべてが理想通り、とはいかないらしい。
「もちろん、嫁さんに対して思うこと、指摘したいときもありますけど、直接は言わないです。そういうときは息子に言うようにしています。間に入ってくれて助かっています」
ここでも、長男がうまく間に入って調整役になっているようだ。孫たちのお世話も頼まれたことはなるべくやってきたという。公共交通機関の少ない地方では、自家用車での送り迎えを“ばあば”が担っていることもよくある。
「頼りにされる、甘えてもらえるって嬉しいですよ。でもね。これだけやってあげたんだから、こっちも何かしてもらえるはずという気持ちでいると、腹が立つと思う。やったことに対して、喜んでくれたらそれだけでよかったな、って思ってやってますよ」
胸を張って笑顔を見せるCさん。最後には、見返りを求めず自分のできることをするのだという“人間関係の極意”のような言葉を伝えてくれた。頼るときは頼って、遠慮はしすぎないで、見返りは求めず、お礼はきちんと伝える。ちょっとしたことが不満のもとになるので、身内といえども気遣いを忘れてはいけないのは、お互い様である。
今回、話を聞かせてもらった70代の女性たちは息子を大いに頼りにしているようで、「嫁との間に入ってもらうと助かる」と口を揃えた。母親にとっては、息子が家庭を持とうが、30代になろうが40代になろうが、ずっと大事な“息子”である。世代で価値観が違うのはしょうがない、と割り切って、近居の暮らしに“かすがい”として役割を果たせばきっと、株が上がるに違いない。
<取材・文/平野ジュンココ>
【平野ジュンココ】
山梨県在住のライター。インタビューが好き。歌を人生の支えとしている。

