今週のテーマは「交際2年で、“他に好きな人ができた”という理由で女が振られた理由は?」という質問。さて、その答えとは?
▶【Q】はこちら:彼のポケットにあった「2人分の高級ディナー」のレシート。スルー?それとも聞く?
31歳の時に出会い、2年間交際した茜に別れを告げることは、心底申し訳ないと思ったし、自分勝手な理由だということはわかっている。
「茜…。ごめん。他に好きな人ができた」
そう伝えると、茜の目には見る見ると涙が溜まっていく。
「え…?冗談、だよね?」
「いや、冗談じゃない。ごめんね茜。一応、LINEとかじゃなくて、ちゃんと会って言ったほうがいいかなと思って」
もしかしたら、久しぶりに茜をまっすぐに見つめたかもしれない。でも肩を振るわせて泣く茜を、今の僕にはどうすることもできない。僕たちの間に、銀座の冷たいビル風が流れていった。
茜のことは、好きだった。
しかし2年という月日の中で、茜を徐々に女性として見られなくなっていった…。
茜と出会ったのは、知人のホムパの会場だった。「良い出会いがあるかな」くらいのノリで参加した僕の隣に、たまたまいた茜。
ホムパでは少し話した程度だったけれど、飲み足りなかった僕は茜を誘い、二人で2軒目へ行くことになった。
しかしこの2軒目で、僕は茜に対して非常に興味を湧くことになる。
「茜ちゃんって、何をやっている人なの?」
「私はフリーで、フードコーディネーターをやってるよ」
「フードコーディネーター?」
「簡単に言うと、雑誌とかテレビとか…撮影の時に、食べ物を綺麗に見せたりする仕事」
「へぇ、そんな仕事があるんだ」
綺麗な黒髪のロングヘアに、意志の強そうな瞳。綺麗な子だなとは思っていたけれど、話してみると仕事に対してもまっすぐで、そして芯があった。
「私の仕事って、同じシーンが二度とないから本当に楽しいんだよね。それが世に出て、形になる瞬間がたまらなく好きで。その分不安定だけど、そんなジェットコースターみたいな感じが意外に嫌いじゃなくて」
「茜ちゃんって、面白いね。個性的というか、他の子と違うというか。そこが、すっごく魅力的だと思う」
そしてこの日をキッカケに何度か二人で食事へ行くようになり、気がつけば一緒にいることが多くなって、交際していた僕たち。
交際を始めるにあたり特別な言葉はなかったけれど、それが逆に僕たちらしくて良かった。
ただもちろん、実際に交際することになり、彼氏彼女の関係になると色々と気持ちの変化も出てくる。
お互いの家に行き来するようになったのだけれど、僕は早々に、茜から出鼻を挫かれることになる。
それは、「茜が喜んでくれるといいな」と思って料理をした日のことだった。茜は料理が上手だから、普段は彼女がご飯を作ってくれている。
でもたまには僕もお返しをしたいと思い、材料を買い出しに行き、下手なりに一生懸命頑張って作ったことがあった。
しかし茜は、僕の料理を見るなり…いや、料理を見る前に早速小言を言ってきた。
「直也、ご飯を作ってくれるのは有り難いけど…その前に、キッチンを綺麗にしてくれない?後片付けまでを含めて、料理だからね」
― それが先?
小さいかもしれないけれど、意外にショックだった。
片付けをしていなかったことは僕が悪いけれど、最初にまず「ありがとう」とか言うべきことはあるはずだ。
作った料理が、見る見るショボく見えていく。それと同時に、僕の心も一気に萎えた。
― 作ってもこんなふうに言われるなら、もういいや。
「あー…。俺、片付け苦手なんだよね」
「そうなんだ…」
何かしても、喜んでくれない彼女…。
この日以来、僕は茜に対して“何かしてあげたい”気持ちが湧きづらくなった。
しかしこれだけが原因ではない。
掃除や料理、すべてやってくれる茜。茜はテキパキと全部こなしてくれるので、僕は何もする必要がない。
「茜、今日のご飯何?」
「今日は、直也の好きなハンバーグにしようかなと思って」
「マジ?嬉しい!」
色々と率先して家事をしてくれるのは本当に感謝もしているし嬉しい。けれども、むしろ茜はやり過ぎ感があった。
「直也、食器だけダイニングテーブルに運んでもらっていい?」
「は〜い」
「直也、ありがとう」
食器を並べるなんて、小学生でもできること。
それなのに茜は、こういうお手伝いレベルのことをすると、大袈裟なくらい喜んでくれるし褒めてくる。
― この子、やりたがりなんだな。
そう思った。料理も家事も、自分でやりたいのだろう。そこに僕が手出しをするのはあまり良く思わないのかもしれない。
ただ、この程度だったらまだ良かった。交際期間が長くなるにつれて、さらに僕は茜を女性として見られなくなっていく…。
交際期間中、特に大きなケンカをすることもなく、穏やかな毎日が続いていた僕たち。
ただ徐々に、週末は家でダラダラとする時間が増えていく。
最初のうちは頑張って出かけていたけれど、本来の僕は家にいるのが好きだ。それを茜は何も言わずに許容してくれたので、なんとなく出かける機会が少なくなっていった。
それと同時に、僕は週末ゆっくりと寝る日が増えた。
しかし何も予定がない週末くらいはゆっくり寝たいのに、布団を剥がして起こしてくる茜。
「直也、何時まで寝てるの?もう10時だよ」
「え〜。今日、土曜なのに」
起こし方が、母親だ。
「朝ごはんは?食べるでしょ?」
「うーん。朝ごはんはいいや。いらない」
「え〜せっかく用意したのに」
「ごめん。後で食べるから、置いといて」
「いいよ、お昼は別で作るから」
会話が、もう親子のようだ。
こうなると、どんどん茜を女性として見られなくなっていく。それに茜はずっと家のことをやってくれるので、僕もそこにあぐらをかいていく。
言い方が本当に悪いのは承知だけれど、彼女ではなく、お手伝いさんのような、母親のような…。
何とも言えない存在になっていき、僕は茜に対して何かをしてあげたいという気持ちになれず、自分から動くことがなくなっていった。なぜなら、頑張る必要が何もないからだ。
「直也。今日の夜、近くでもいいからご飯に行かない?」
「いいよ。この前の焼き鳥屋さんでも行く?」
「うん!」
外食だってそうだ。茜が何でも作ってくれるので、僕は茜と一緒の時は無理して外食に行く理由はない。だから外食の頻度も必然的に落ちていく。
そして茜といる時くらいは休肝日にしたいので、仮に外で食べてもお酒も飲まないし、会話が大盛り上がりする訳でもないので、ご飯もサクサク終わる。
「よし、帰ろう。ご馳走さまでした」
― あれ?なんで一緒にいるんだっけ。
そう思い始めてしまった。
そしてそのタイミングで、僕からすると“頑張って追いかけたい”女性に出会ってしまった。
彼女とはまだ付き合ってもいないし、中々手に入らない。だから外資系ホテルに入る、超高級フレンチにも連れて行くし、久しぶりに自分がちゃんと努力しないといけないな…と再確認させられている存在だ。
何より、彼女はとても喜んでくれるし、ある程度放置してくれる。
そうなると対照的な茜のことを、もう好きとは思えなくなってしまった。いや、人としては好きだけれど、もう完全に異性としては見ることができない。
茜に対しては、本当に申し訳なく思っている。
色々とやってくれて、まだ同棲すらしていないのに、僕の家のことも全部やってくれるから。
でも逆に、そこまで全部されると、もう母親とか、あれこれ世話を焼いてくれる寮母さんのようにも思える。
女性はある程度ワガママでもいいと思うし、絶対にやり過ぎない方がいいと思う。
男の人を手のひらの上で転がすくらいが丁度いい。男性は、尽くされれば尽くされるほど調子に乗って、感謝も薄まっていってしまうから…。
そして一度失ったトキメキとか憧れを取り戻すことは相当難しく、僕は茜と別れることを決めた。
▶【Q】はこちら:彼のポケットにあった「2人分の高級ディナー」のレシート。スルー?それとも聞く?
▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟
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