日本での進学・就職が大前提…中国人留学生が地方に来る“裏事情”
2年生のある中国人女子留学生は、「中国の全国統一大学入試(=高考)における競争が本当に過酷で辛く、私は中国で大学受験だけはしたくなかった」と、日本行きを決めた理由を語った。
もともと日本の音楽やアニメが好き。3年前から独学で始めた日本語の影響もあり、自由な校風にもひかれて2023年4月、同高への入学を果たしたという。
「暮らしてみて思いますが、やはり私には中国よりも、日本の方が性に合っています。配慮や思いやりがあるところが、私は好きです。(私のように大人しくて)自分の気持ちを中々、外に向かって言えない人にも、配慮がある『生きやすい社会』になっているなあと、日本で実感します」と、彼女は話した。
両親と弟も既に中国を離れ、オーストラリアに移住したという。そして彼女もまた中国に戻る意思はないようだ。「この先は日本の大学に進み、日本で就職したいです」と言い、このまま日本移住を視野に入れる。
次に教室の中で出会ったのが、同じ2年生の男子留学生だった。中国・河北省出身。日本に留学した理由は、日本の大学を目指しているからと言い、「やはり中国は競争が激しく、希望の大学には中々入れません。日本の入試はそれほど過酷ではなく、しかも日本の大学は中国の大学よりも本当に自由。自分の思いや考えを、自由に言うことができるから」と話した。
さらに同校には、中国人の先生が常駐し、「日本語の心配をあまりしなくて良かった」というのも、選んだ理由の一つだったという。
「日本の生活は毎日が新鮮で楽しいです。大学では法律を勉強して、日本で就職し、ずっと日本で暮らしたいと思っています。落ち着いたら、中国にいる両親も日本に呼び寄せたいとも考えています」と、彼は語った。
“無条件”で受け入れるところも…学生集めに骨を折る日本の大学
和田校長はこう明かす。
「うちの中国人留学生のほぼ全員が日本の大学に進み、そのまま日本で就職することを前提に来ています。日本の大学は今、どこも学生を集めるのに非常に苦労をしているので、無条件に、我々のような高校から中国人留学生を受け入れてくれる大学すらあるのです。それを、うちの中国人留学生もよく分かっています」
日本の現実は想像を超えるところにまで達しているようだ。
学校経営を中国人留学生に依存…少子化・過疎化にあえぐ地方
本当は国際色豊かな学校にしたかった…校長が漏らした本音
鴨川令徳高校の生徒は現在、日本人と中国人の比率が約半々。だが授業は基本、すべて同じ教室で受けているという。一目見ただけでは、誰が中国人留学生かは分からないが、この先、日本ではもしかしたら、「こんな風景」が、全国各地の高校に広がっていくのかもしれない。
「本当はもっと国際色豊かな学校にしたかったのですが、こうした形でまとまった人数が入ってきてくれるのは、中国からだけなのです。だから今のような(中国人留学生が多い)形になってはいますが、学校の経営面では非常に助かっています」。学校の再建を何とか果たし、肩の荷が少しは下りたのだろうか。
和田校長は、インタビューの最後にそう本音を漏らした。和田校長に丁寧に御礼を述べ、記者は同校を後にした。
そして東京への帰りの電車の中、再び、頭を整理した。
鴨川令徳高校は、偏差値が高い学校とは言えず、立地にも大きなハンディがあることは否めない。特別な教育プログラムを持つわけでもなかった。さらに、再建が進んだとはいえ、5階建ての大きな校舎には空き教室が目立ち、まだまだ生徒の確保には苦しんでいるようにもみえた。
この先、多くの日本人生徒が集まることも到底、考えにくい。そんな学校の経営の生命線をもし、高額な授業料を払い続ける中国人留学生らが握っているとしたら、複雑な思いもする。
[図表]日本と中国の高校生の生徒数比較 出所:文部科学省、中国教育省の公表資料を基に日経が作成
東京に戻り、さらに取材を進めるうち、少子化・過疎化に直面する日本の地方では、中国人留学生の獲得に動く学校が、実は鴨川令徳高校以外にも少なくないことが分かってきた。
