「母国の受験戦争が辛くて」「日本語ができなくても心配は少ない」 すでに全校生徒の半数を占める…千葉の過疎地域にある、学費年200万円の私立高に“中国人留学生”が殺到するワケ

「母国の受験戦争が辛くて」「日本語ができなくても心配は少ない」 すでに全校生徒の半数を占める…千葉の過疎地域にある、学費年200万円の私立高に“中国人留学生”が殺到するワケ

町が年間90万円の学費・寮費を負担する北海道・東川日本語学校

北海道・旭川空港から車で約15分。大雪山[たいせつざん]の麓、人口約8000人の東川町の中心部に位置するのが、東川日本語学校だ。

「夏の夜空に天の川があります。織姫と彦星です」。学校の教室を訪れると、中では外国人の留学生たち3、4人が1つのグループとなり、七夕にまつわる文章を流ちょうな日本語で、音読し合ってみせていた。

同校は2015年、日本初の「公立の日本語学校」として開校した。旧東川小学校を改修した校舎は、町立図書館に隣接し、目の前には鮮やかな緑の芝生が広がる恵まれた環境にある。

同校でもやはり多くの中国人留学生が学ぶ。全生徒104人(2025年1月時点)のうち、中国人が外国人留学生最多の29人を数え、全生徒の3割を占める。人気の理由は、東川町からの留学費の負担。町が学費と寮費の約半分、年間90万円ほどを負担してくれるのだ。何が町の狙いなのか。

「(外国人留学生への)支援を厚くしたのは、少子化で減った街の若者を、留学生でカバーするためです」。同校の小山正道校長は、そう狙いを説明した。

奨学金に加え、東川町は2017年度から留学生1人につき、「ひがしかわユニバーサルカード」(HUC)と呼ばれるデジタル地域通貨を月8000円分配っている。年間でみると、約10万円のお小遣いに相当する。町の飲食店やコンビニで使うことができ、留学生の生活を支援すると同時に、町内での消費喚起につなげるという。

小山校長は「留学生が本校を選ぶ理由は、学費が安いからです。民間の日本語学校の半額以下で済みます。町のスーパーや居酒屋、農家でアルバイトをする生徒もいて、地域の労働力にもなっています。町に活気が出ています」と、メリットを強調する。

公金を使って、多くの留学生を受け入れ、支えざるを得ないのが地方の現実?

そんな東川日本語学校には、全国の地方自治体から視察も相次いでいる。過疎化、人口減少を「外国人留学生で埋め合わせしたい」と願う自治体が多いといい、1カ月に4〜5件の視察予定が入るというから驚く。

人口8000人の町、その町の生命線を担うのは、本当に中国人をはじめとした外国人留学生たちなのか。だが、こうした公立日本語学校は少しずつ、日本各地に広がりつつある。

東北地方、宮城県大崎市でも2025年春、公立の日本語学校が開校した。同県石巻市でも同様の学校の開校検討が進む。公金を使ってでも、中国などから多くの留学生を受け入れ、支えざるを得ないのが、果たして今の日本の地方なのか。背後には、厳しい日本の現実が横たわる。

だが、取材班が調べを進めるうち、さらに違った「日本の風景」もまた見えてきた。中国人留学生の受け入れで、単に学校経営を成り立たせるという話ではなく、中国との関係を深めようとする、日本の地方の高校の話である。

スポーツ強豪校にも中国人留学生が続々と

第95回選抜高校野球大会優勝、第99回全国サッカー選手権大会優勝――。

JR東京駅から中央線に乗って約2時間。甲府駅で乗り換え、中央本線で1駅。JR酒折駅から10分ほどの距離を歩くと、スポーツの強豪校として知られる私立・山梨学院高校が見えてくる。

正門に近づくと、「祝 甲子園優勝おめでとう」「祝 花園出場 ラグビーフットボール部」などと書かれた複数の大きな垂れ幕が来訪者の目を引く。

地方にありながら、生徒数約1200人(2024年5月1日現在)に上るマンモス校。スポーツ強豪校として山梨県外からの入学者も多く、生徒数は15年前に比べ、3割強も増えた。少子化、地方というハンディをものともしない、まさに経営的にも実力校だと言っていい。

そんな同校も最近、中国人留学生の受け入れを本格的に始め、積極的になっているという。なぜなのか。「系列の山梨学院大学が、中国との交流を深めていることがあり、当校の留学生にも中国の生徒を対象に加えました」と、同校の吉田正校長は説明する。

2016年度に初めて4人の中国人留学生を受け入れたのをスタートに、その後も毎年数人程度を受け入れてきた。本格化したのは2021年頃から。学校側は、バイリンガルの中国人スタッフを雇い、年間20人の中国人留学生の受け入れを目指し、体制を整えた。

さらに中国人スタッフが中国現地の学校を回って宣伝し、吉田校長自身も2019年、中国を自ら訪問して学校をPRした。学費は年間約100万円。これとは別に寮費もかかるが、今では中国人留学生を年間30人以上受け入れるまでになっている。

留学生がいることの日本人生徒にとってのメリットと懸念

どんな生徒が入学してくるのか。

「日本の大学に進学し、そのまま日本で就職することを目指す学生です」。吉田校長はそう言い切った。授業は日本人生徒と一緒に受けているという。

スポーツ強豪校の同校には、ケニア、フィジー、トンガ、ニュージーランド、ウガンダなどからの「スポーツ留学生」がもともと多かった。だが今ではスポーツとは全く無関係の中国人留学生が人数では最多となった。将来的に中国人留学生をどこまで増やそうとしているのか。

「学校に留学生がいるのは日本人生徒にとっても良い環境です。今、学校で学ぶ日本の高校生が40代になる頃には、勤務先の会社には、より多くの外国人がいる環境が当たり前になるでしょう。高校生のうちから、外国人と日常的に接しておくのは非常に良い経験になると思います」

吉田校長はそう話した。

ただ一方で「今後、中国人の志願者がさらに増えれば、受け入れ人数を増やすことも視野に入れますが、うちは日本の学校ですから……。その辺の伝統は大事にしていきたいと考えています」と、慎重に語った。

日本経済新聞取材班

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