
「外で稼ぐ夫のため」と言い聞かせ、15年間家族と家計を支えてきた専業主婦の野口さん(仮名・52歳)。夫の心ない一言をきっかけに就職活動を始め、自身の収入による経済的自由を獲得しようと試みます。そこで大きな障壁となったのがいわゆる「103万円の壁」。共働き世帯に「扶養範囲」という制約を課すこの制度が日本のジェンダー格差社会と重なると、野口さん一家にみられるような家庭内の「経済的モラハラ」に発展してしまうといいます。詳しくみてみましょう。
「外で稼ぐのが俺の仕事だ」という言葉の罠
「外で稼ぐのは俺の仕事だ。家のことはお前に任せる」
地方公務員の夫(58歳)がかつて口にしたその言葉を、野口真由美さん(仮名・52歳)は「家族への愛」だと信じて疑いませんでした。15年間、家事と育児、夫のサポートに全力を注ぐ専業主婦生活。
しかし、子供の成長とともに教育費や食費は膨らみ、家計は火の車に。真由美さんは「今の生活費ではどうしても足りない。補填してほしい」と何度も訴えましたが、夫は「渡している金でやりくりするのがお前の役目だろ」と聞く耳を持ちませんでした。
家計の限界を感じた真由美さんが、改めて逃げ場のない事実として「これ以上は無理」と正面から突きつけた際、夫が鼻で笑いながら放った一言が、真由美さんの人生を真っ二つに叩き割りました。
「金が足りない? ならお前が働け! 15年も遊んでいたんだから、パートくらいすぐ見つかるだろ」
「夫の希望で家庭に入った私の15年を『遊び』と切り捨てられた。あの瞬間、夫への情愛はすべて冷めました」と真由美さんは静かに語ります。
屈辱の扶養の壁と、3年間の潜伏
15年のブランクを抱えた再就職活動は、自尊心を削る作業の連続でした。「履歴書は真っ白。最初は時給1,000円のパートが精いっぱいでした。それでも夫は『扶養の範囲(103万円)を超えたら許さない』『家のことは疎かにするな』と、私の自立を阻み続けました」
しかし、真由美さんは諦めませんでした。パートから派遣社員へステップアップし、そこからの3年間、夫が寝静まったあとに猛勉強を重ねて実務に役立つ資格を取得。
派遣先での粘り強い働きが評価され、ついに専門職としての正社員登用を勝ち取ったのです。
