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「生命保険なんていらない」妻の意向で解約、その後、50代店主が急逝…保険金ゼロの家族を支えた“ある資産”とは【CFPが解説】

「生命保険なんていらない」妻の意向で解約、その後、50代店主が急逝…保険金ゼロの家族を支えた“ある資産”とは【CFPが解説】

生命保険は「万が一のときの生活資金」を確保する代表的な手段ですが、絶対に入っておかなければいけないわけではありません。なぜなら、家族の選択やその後の暮らし方は、必ずしも一つの正解に収まるとは限らないからです。一方で、どこの家庭においても、万が一の事態が起きた際の金銭的な備えは何かしら準備しておく必要があるでしょう。本記事では、CFP認定者である二村猛氏が、生命保険の募集業務に従事していたころに出会った家族経営の飲食店の事例をもとに、“備え”の考え方について解説します。 ※事例は、プライバシーのため一部脚色して記事化したものです。

「“万が一”が本当に起こってしまった」…生命保険キャンセルの代償

筆者は30代後半のころ、法人会に所属する中小企業の経営者を中心に、生命保険を活用した事業継続資金や死亡退職金の準備といった「経営上の備え」を提案する業務に携わっていました。

生命保険は、万が一の際の借入金返済や事業承継をスムーズに進めるための強力なツールです。しかし、実務の現場では、その「必要性」を理解していても、価値観や考え方の違いから、当人の希望通りに進まないケースも少なくありません。

ある家族経営の飲食店との出会いを通じて、筆者は「家族を支える資産の本質」について深く考えさせられることになりました。

その飲食店は、50代の夫婦と20代の息子さんで営まれていました。経営者であるご主人は、万が一の際の事業継続や、息子さんへの承継を視野に入れ、法人契約での生命保険加入を決断されました。保険加入に伴う診査の結果、体調の懸念はあったものの最終的には加入が認められ、ご主人と共に安堵したことを覚えています。

しかし、その数日後、奥様から「保険は不要なのでキャンセルしたい」との連絡が入りました。ご主人は申し訳なさそうな表情を浮かべていましたが、奥様の強い反対を覆すことは難しいと判断し、キャンセル手続きを進めることになりました。

それからしばらくしてのことです。お店の前を通ると、定休日でもないのにシャッターが閉まっている日が続きました。気になってご自宅を訪ねると、奥様から静かにこう告げられました。

「主人が亡くなりました」

筆者はそのとき、言葉を失いました。

「あのとき生命保険に加入していれば……」

もし、あと一歩踏み込んでキャンセルを思いとどまらせていたら――。当時の筆者は、自責の念に近い「たられば」の思いに駆られました。店を継ぐはずだった息子さんは、お店をたたみ、別の職に就く道を選ばれました。

「生命保険金」が守った、遺された家族の生活

そうしたショッキングな出来事があった一方で、筆者自身の経験を振り返ると、対照的な光景が浮かびます。筆者の父が50代で他界した際、母のもとにはまとまった額の生命保険金が届けられました。

このお金のおかげで、当時大学生だった筆者の学費の支払いができ、父の念願だった自宅増築のローンの返済も行えました。もし保険金がなければ、筆者は大学中退を余儀なくされていたかもしれませんし、その後の生活はどうなっていたのだろうかと思います。

二つの出来事を比較すると、「生命保険こそが正解である」と結論づけたくなるかもしれません。しかし、FPとして多くの資産形成を見てきた現在の視点では、必ずしもそうとは言い切れない側面が見えてきます。

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