売主に損害賠償請求が及んだ事例
実務では、未払残業代や未払税金、法令違反の存在がM&A後に発覚し、売主に対して損害賠償請求がなされる事例が多数存在します。ある案件では、売主が「労務管理に問題はない」と説明していたものの、実際には長時間労働が常態化しており、M&A後に未払残業代の請求が相次ぎました。買主はこれらの支払を余儀なくされ、表明保証条項違反として売主に損害賠償請求を行いました。
別の案件では、税務上の処理に問題があり、過年度分の追徴課税が発生しましたが、売主はM&Aの際に「特段の問題はない」と説明していました。このように、事業運営の基礎に関わる事項について説明と実態が異なっていた場合、表明保証条項違反として責任が問題となる構造は共通しています。
まとめ
表明保証条項違反トラブルは、M&Aを実行した後に、当初想定していたほどの収益が得られていない、あるいは企業価値を過大に評価して取得してしまったという買主側の後悔を契機として表面化することが一般的です。
買主としては、M&A後の業績不振や収益性の低下を受けて、その原因を遡及的に検証する過程で、売主の説明内容や開示資料に問題があったのではないかという疑念が生じ、表明保証条項違反の主張に至る構造が多く見られます。その多くは、未払残業代、未払税金、法令違反、重要情報の未開示といった、M&A後に現実の負担として顕在化する問題に起因しています。決算書や事業説明と実態との不一致があれば、表明保証条項違反として損害賠償請求が問題となり、契約書の文言、説明内容、当時の認識状況が裁判では詳細に検討されます。
弁護士法人M&A総合法律事務所 代表弁護士
土屋 勝裕
