同じく生まれつき決まっているのが「苗字」だ。結婚や養子縁組を経て変わる可能性があるものの、基本的にはそれなりに長い付き合いになる。
さて、苗字に起因して本人の気質になんらかのバイアスがかかるのだろうか、とふと考えてしまう。たとえば、「ア行」よりも「ワ行」の苗字のほうが待つ場面が多そうだから気長な性格になるのかも……みたいな具合でだ。
筆者の周りにも、“かなり珍しい苗字”の方がいたので、取材を申し込んでみた。曰く、「佐藤」や「鈴木」のような“多数派”と比べると、自己紹介のターンが長くなる一方で、アイスブレイクはしやすいのだという。いったいどんな人生を歩んだのか、本人の口から語ってもらおう。

◆日本にわずか約30人
今回話を聞いたのは「六十里 恵(ついひじ めぐみ)」さん。「ついひじ」は、筆者のPC環境では変換することができなかった。おそらく多くの方がふりがななしでは読めないのではないか。苗字に関するデータが集約されているサイト「苗字由来net」によれば、全国でわずか30人しかいないらしい。珍しい苗字を見聞きすると、まず気になるのが出身地だが、六十里さんは待っていましたとばかりにこう答える。
「すぐに出身地を聞かれるのは、“珍名あるある”ですよ(笑)。六十里という名前は埼玉県の熊谷が発祥らしくて、富士山から60里離れていたからだそうです。それはいいとしても、どうすれば『六十里』をどう読めば『ついひじ』になるのか不思議ですよね。以前、父に聞いてみたんですが、『先祖がへそまがりだったんだよ』と……(笑)」
これだけ少なければ、仮に同じ苗字の人に出逢えったときに運命を感じてしまいそうだ。
「親戚以外の六十里さんには会ったことないですね。前の職場で、『ついひじ〜』って呼ばれているのを見て、慌てて名刺交換しに行ったら、その方は『對比地』さんでした。漢字が違う人は割といるみたいですね」
◆間違われてもいちいち訂正しない
ほかにも”あるある”を教えてもらった。「読み方を間違われてもいちいち訂正しないで聞き流しますね。満席の飲食店で名前を書いて待つ場合は、偽名を使います。あとは、捕まらないように気をつけています(笑)。この名前で報道されると、一発で特定されてしまい、同じ苗字の一族に迷惑がかかりますからね」
超少数派ながら、珍しい苗字の人には『珍しいね〜』と話しかけてしまうという六十里さん。かくいう筆者も「椿原」という、やや珍しい苗字。六十里さんとはじめてお会いした時に「珍しいですね!どこ出身ですか?」と、尋ねられたことを思い出した。

